東京駅を巡り葉山の高齢者施設までの道中ですみれの心境の変化が
互いに少しづつ打ち解け始めた宇佐見とすみれ。東京駅や東京タワーといった観光客があふれる場所も、東京のアイコンとして通り過ぎて行く。すみれとの会話の中で彼女の過去に壮絶な出来事があったことを知った宇佐見は、ただ一度だけ乗せる客としての無味な感情から、どこか彼女に寄り添うような思いを巡らせ始めていく。
横浜ベイブリッジを通って葉山に向かっていることから、首都高速神奈川3号狩場線から狩場ジャンクションを経て横浜横須賀道路を使っていることが推測される。
ふたりで食事を摂った後、すみれは「今日は施設に行きたくない、どこかに泊まりたい」と言い出すが、宇佐見は1日の契約なので、それを断り、予定時間よりも遅れて葉山の高齢者施設にすみれを送り届ける。
宇佐見とすみれの別れ。帰宅しても宇佐見はすみれの願いを聞いてやるべきだったのではないかと、どこか心が晴れずにいた。そしてすみれとの約束を果たすべく、しばらくした後、すみれの居る高齢者施設に優香演じる妻・薫と共に訪れるのだが…。
タクシーと客という一期一会で表現する人と人のつながりの大切さ
本作の基となった2003年日本公開のフランス映画『パリタクシー』では、92歳の老女・マドレーヌが、免停寸前のタクシー運転手・シャルルの運転するタクシーで、終活に向かうためフランス・パリの反対側まで送られる筋立て。
そこを本作品では東京の葛飾区から神奈川県葉山までの道程に変更している。そして戦争の悲惨さから、戦後女性が独り立ちして生きるのがまだまだ難しかった時代の苦しさ、立ち向かうための自分の貫き、などをすみれの口から語らせていく。
そしてたった1日とはいえ、東京から神奈川までをともに旅するロードムービーでもある本作は、劇中ですみれの85年の人生を語らせることで、戦後の日本の現状と行く末を山田洋次が憂いている様を示している。
たまたま乗り合わせることになった宇佐見とすみれ。そこにある一期一会の時間。そこには「今日と同じ日は二度と来ない」という人生の寂しさと喜びが同居する。一期一会で生まれる人と人との交流、それが人生の中でどう変化し、どう結末に向かうのか、山田洋次は戦争を経験し、映画を撮り続け、自分にも観客にも問い続けている。「人と人との繋がりこそが人生を豊かにするはずなのだ」と。
ロケ地めぐりあとの1食
葛飾柴又駅を出るとすぐ左手にある三河屋。ここでは昔ながらのソース焼きそば(400円)を食べられる。本店は柴又駅前がリニューアルされる以前から営業している老舗。今川焼き(130円)などを買いに訪れる人も多い。帝釈天を訪れたら、柴又参道・高木屋のだんごや大和屋のてんぷら、という手もあるが、地元の人たちに長く愛されている三河屋で小腹を満たすのも良いのではないだろうか。
【三河屋】
営業時間:9時〜19時頃
定休日:木曜日
公開情報
┃タイトル:『TOKYOタクシー』
┃公開情報:11月21日(金)全国ロードショー
┃出演:倍賞千恵子 木村拓哉
┃ 蒼井優 迫田孝也 優香 中島瑠菜
┃ 神野三鈴 イ・ジュニョン マキタスポーツ 北山雅康 木村優来
┃ 小林稔侍 笹野高史
┃監督:山田洋次
┃脚本:山田洋次 朝原雄三
┃原作:映画「パリタクシー」(監督 クリスチャン・カリオン)
┃配給:松竹
┃©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

















































