盗まれてヤングSS専用パーツを部品取り車から移植
スバル「360」といえば、日本の軽自動車史を語るうえで外せない名車です。なかでも「ヤングSS」はよりパワフルに、スポーティに仕立てらるためにダブルキャブを採用する人気の高いグレード。今回は、そんな貴重なヤングSSをシングルキャブ仕様にした個体に乗り続けています。オーナーのこだわりなどを紹介します。
1950年代当時の新機構が満載だったスバル初の四輪乗用車
千葉県佐倉市で開催されたサクラオートヒストリーフォーラムの歴代スバル車特別展示に停車していたのが、この赤いスバル360だ。カバー付きのヘッドライト、パイプバンパー、ボンネットに入るストライプは、モデル末期に登場したスポーティグレード「ヤングSS」のディテールである。オーナーの松田さんにお話を伺った。
「1969年式のスバル360ヤングSSです。このクルマの前にも360に乗っており、ヤングSSは5年ほど前に増車しました。正真正銘のヤングSSなのですが、前オーナーがエンジンの腰上をシングルキャブモデルに交換しています。じつはヤングSSのツインキャブエンジンより、シングルキャブエンジンのほうが街中では乗りやすいので、この仕様は気に入っています」
スバル360は、中島飛行機を前身に持つ富士重工(現SUBARU)が開発・販売した同社初の四輪車である。モノコック構造のボディやトーションバーによる四輪独立懸架、ラック&ピニオン式のステアリングなどの当時の新機構を採用した。また、アルミニウムやFRPといった当時最先端の素材を積極的に使用することで、徹底した軽量化が図られた。
高圧縮ヘッドとツインキャブで36psまでパワーアップしたヤングSSは、モデル末期の1968年に登場する。外観では、前述したとおりヘッドライトカバーやパイプバンパー、ボンネットのストライプ、ミラーなどが通常モデルとは異なる専用ディテールだ。インテリアは、2本スポークステアリングがヤングSS専用品である。ただし、この車両は前オーナーのときに、エンジンルームの眺めは通常のシングルキャブモデルと同じになっている。
全塗装を施さずオリジナルペイントをキープする理由
じつはこのクルマを譲り受けた当初、ボディの状態こそ良かったものの長らく車検が切れた状態で、ヤングSS特有のパーツが盗まれ欠品していたという。そこで松田さんは、ヤングSSと同じディテールを持つヤングSの部品取り車を確保。そのパーツを移植することで、無事に路上復帰を果たしている。
ボディはサビこそないものの、塗装は年式相応にヤレており、一部に補修跡があった。しかし、コンパウンドで磨いただけで、あえてオリジナルペイントをキープしている。
「ひと通り機関系のレストアが終了し、ナンバーがついた状態で、前オーナーを訪ねたことがあるんです。このクルマを見て懐かしんでくれました。オールペイントしていたら、前オーナーが乗っていた当時の雰囲気は残らなかったと思うので、喜んでもらえて嬉しかったですね」


























































