クルマの廃材が“欲しくなるモノ”に変わるアップサイクル最前線
クルマを解体するときに出る廃材のリサイクルは、いまや高い水準で行われています。最近は「再利用」のその先を目指す動きが注目され始めました。使い終えた部品や素材に手を加えながらも、その素材の良さを残しつつ新たな魅力を持つ製品へと生まれ変わらせるという考え方です。ガラスや革といった身近な素材が、意外な形で私たちの暮らしに戻ってくる。それをリサクルではなくアップサイクルと呼びます。クルマ好きなら思わず手に取りたくなる、新しい製品へとなる実情を紹介します。
自動車リサイクルはどこまで進んでいるのか
2005年1月より自動車リサイクル法が施行され、ユーザーは新車購入時にリサイクル料金(乗用車は6000円〜1万8000円)を負担している。こうした取り組みもあって、2024年度の使用済自動車における「リサイクル実効率」は、重量ベースで99%以上を達成した。
クルマの再資源化は非常に優秀といえるが、ひと口にリサイクルといってもさまざまな種類がある。
例えば、エンジン、トランスミッション、ドアやフェンダーなどの外装部品、電装品など、中古部品として再利用される部品は、全体の20~30%。鉄やアルミ、触媒の貴金属や、バッテリーの鉛など、再資源化部品となるのが約15%。その他の部分は、専用のシュレッダーにかけて、鉄と非鉄金属に分類され、有価金属等業者が買い取り素材としてリサイクルされる。
そうした有用金属を回収した後に残る、樹脂、ゴム、ガラスなどの粉砕クズは、ASR=シュレッダーダストと呼ばれ、可燃物は助燃料として熱回収リサイクル。その他のガラス片などの不燃物はタイル、あるいはグラスウール、断熱材などの材料に再利用されることが多かった。
だがここへきて、もうひとつ別の流れができつつある。それが「アップサイクル」という考え方だ。
ガラスに含まれている不純物をあえて個性として商品に活かす
アップサイクルとは、廃棄物や不要になった製品を再利用し、元の製品よりも価値の高い新しい製品を作り出す方法のこと。対になるのが「ダウンサイクル」で、再利用の際に品質や価値が下がるものを指す。たとえば古紙をトイレットペーパーにしたり、古着をウエス(雑巾)にしたりするのはダウンサイクルにあたる。
クルマの場合、上掲のように廃棄物を溶かして原料や燃料にするリサイクルが50%近くだったが、廃棄物にデザインや創意工夫を加えることで、元の製品よりも価値の高い新しい製品を生み出す、アップサイクルに取り組む企業も出てきた。
そのひとつが、北海道の株式会社マテックだ。この会社では地元の専門業者とタッグを組んで、使用済みのクルマの窓ガラスを分別・破砕したあと、タンブラーやロックグラス、花瓶などを作製している。

再生ガラスは不純物が混じるため気泡が入りやすく、色ムラが出やすい。しかし、その特性がふたつとない個性、すなわち「味」となって魅力になっている。とくに、濃いグレーやブルー、黄緑色などは自動車の廃ガラスならではの色合いで、他にはない風合いと評価されている。
ハンドメイドだからオンリーワン!革シートが名刺ケースに
もうひとつ、自動車の革シートを再利用する製品開発も実現した。クオリティの高い高級車の使用済みシートを回収し、レザーの名刺ケースを製作。メーカー、車種、年代、使い込み具合によって素材の風合いが異なり、それを職人がハンドメイドで仕上げているため、これもまたオンリーワンの逸品となる。
すでに、廃材(木材)を再利用して家具を作ったり、古着をリメイクしてオリジナルバッグにして売り出すなど、身近なところではアップサイクルも広がりつつあるが、自動車業界ではまだまだこれからといえる。
クルマ好きを自認するなら、これらのガラス製品や革製品、あるいは使用済みエアバッグを再利用したレジャーシートなどのアップサイクル製品に興味を持って、愛用品のひとつに加えてみてはいかがだろうか。
マテックのアップサイクルへの取り組み(HP)
https://www.matec-inc.co.jp/business/upcycle/












































































