バブル期に神戸の正式輸入代理店「イズデラジャパン」が2台のインペラトールを正規輸入した!
今回RMサザビーズ「MIAMI 2026」オークションに出品されたのは、後期型のインペラトール108iだ。シルバーのボディにブラックレザー内装という、ドイツ製スポーツカーの典型的なカラーリングをまとっている。
ポップアップ式ヘッドライトと、助手席側に配置された曲線を描くツインエキゾーストが特徴だ。一目で「シリーズ2」と判別できる。
柔らかなボディラインや拡大されたフロントグリル、彫刻的なホイールアーチベントも見逃せない。ボンネットに統合されたオフセットNACAダクトにも注目だ。かつてダイムラー・ベンツ社が自ら試作し、エバ
この左ハンドル仕様車は、日本の顧客へ引き渡すために作られた個体である。オリジナルの注文書や書簡の写しなど、興味深い資料が添付されていた。実はバブル景気真っ只中の日本には、神戸を拠点とした「イズデラ・ジャパン」が設立されている。赤いシリーズ1と、このシルバーのシリーズ2の合計2台のみが、日本へ正規輸入されていたのだ(一説には屋根のないスパイダー036iモデルも日本にあったと言われている)。
リアのエンジンフード下には、ダイムラー・ベンツ製の「M119」型エンジンが搭載されている。後期型の特徴であるDOHCV型8気筒32バルブ燃料噴射式エンジンだ。300ps以上のパワーを発揮し、ZF製5速マニュアルトランスミッションと組み合わされている。
流札から一転! 約1.4億円で落札されたオークションの妙
日本に正式輸入されたのち(イズデラ ジャパンが倒産し、破産管財人から新車同様のインペラトールを引き継いだのがクラシックメルセデスを扱う京都のLLコレクション。およそ30年に渡り新車状態のまま保管していたとされる説がある)のオーナーシップ歴については、今回のオークションで明らかにされていない。しかし、2016年に英国で登録されたのち、ドイツの所有者へ渡ったことは判明している。その間に「MePoRes F. Ulbricht GmbH」社による部分的なレストアが施された。
2021年には別の著名な欧州コレクションへ加わった。この際に行われた冷却システム、空調システム、ブレーキなどの点検・整備を証明する請求書も保管されている。
その後、今回の出品者である現オーナーが入手する。その直前には、カリフォルニア州スコッツバレーの「カネパ」社による点検・整備が実施された。「ポルシェ 959」のレストモッド版を発表したことでも世界的に話題を呼んでいる、著名なパフォーマンス専門会社だ。
公式オークションカタログが作成された時点で、走行距離計は1400マイル(約2250km)未満を指していた。まだ新車に限りなく近い低走行車であることも特筆すべきトピックである。
RMサザビーズ北米本社は、この個体に65万ドル〜85万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。近年の販売実績を鑑みた現実的な価格設定だ。
迎えた競売では、エスティメート上限を大きく上回る92万9000ドルでハンマーが落とされた。日本円に換算して約1億4585万円という、出品者側にとっては望外の価格である。
じつはこの個体、2024年夏のモントレー・オークションにも出品されていた。当時は80万ドル〜100万ドルという強気のエスティメートが設定されたものの、「No Sale(流札)」に終わっている。
翻って今回のマイアミでは、かなり現実的なエスティメートが設定された。それにもかかわらず、結果的には前回のエスティメート範囲内(約93万ドル)で落札されたことになる。
イズデラ社が作ったインペラトールのルーツは、メルセデスの伝説的自動車となっている300SLに始まり、1978年にメルセデス・ベンツが発表したコンセプトカー「CW311」をモチーフとしている。当時CW311の開発責任者だったのが、エーベルハルト・シュルツで「メルセデスがやらないのなら、自分で作る」とメルセデスからすべての許認可を取り、自身のブランド「イズデラ」で市販化したという意地とプライドの傑作車といえるのがインペラトールだ。
今もエンジニアとして現役だというエーベルハルト・シュルツ氏(81歳)に1億5000万円という落札額が届いたのなら、喜んでくれているのだろうか。それとも「皇帝の名前に恥じる金額だ」といぶかしがるのだろうか。いずれにせよクラシックカー・オークションは、常に「水物」であると再認識させられる。
※為替レートは1ドル=157円(2026年3月24日時点)で換算






























































































