コルベットのエンジンを積むマツダRX-7が英国オークションに登場し話題を集める
英国の名門オークション会社「アイコニック・オークショネアーズ」のリストに名を連ねるのは、オリジナル純度が高いサバイバーカー(製造された当時の状態を奇跡的に保ったまま、現代まで生き残った未修復のクルマ)ばかりではない。2026年3月のイベントで開催された英国の競売には、歴代オーナーたちの手によって徹底的にカスタマイズされたFD3S型マツダ「RX-7」が登場した。しかも独自のロータリーエンジンから、なんとアメリカンV8エンジンを搭載した異色のスポーツカーとなっていたそのクルマの価値とは。
マツダのアイコニックな存在であるロータリーエンジン搭載車の歴史を振り返る
「小さな排気量で高性能を引き出せる夢のパワーユニット」として誕生したロータリーエンジン。その量産化に世界で初めて成功したマツダは、初の市販車である「コスモロータリー」発売以降、セダンやワゴン、さらにマイクロバスに至るまでロータリー搭載車を拡大し、ロータリーエンジンによるフルラインアップ戦略を推し進めた。しかし、年々厳しさを増す排ガス規制や燃費性能への要求という時代の流れに直面し、徐々に車種は整理されていく。そして、最終的にロータリーエンジンは、マツダを象徴するアイコニックな存在へと立ち位置を変えていった。
その象徴的な存在がマツダ「RX-7」というわけだ。ロータリーエンジンを搭載するスポーツカーとして一時代を築いたセブンだが、時代の進化とともにライバル勢は排気量を拡大し、パワー競争は激化していく。かつては高出力エンジンとして名を馳せたロータリーはレシプロエンジンのように簡単に排気量アップすることは難しく、エンジン性能だけで優位性を維持することは困難になっていった。

理想のRX-7を目指してより大きなパワーを求めるユーザーがアメリカに存在した
そこで3代目となるFD3S型が追求したのは、スポーツカーの本質といえる軽さと運動性能だった。ロータリーエンジンの特徴であるコンパクトさを活かした低重心、最適な重量配分化を突き詰め、さらに徹底的な軽量化を推し進めることで、圧倒的なコーナリングスピードと鋭いステアリングレスポンスを武器に、ライバルたちに真っ向から挑んだ。その姿は、出力に勝るアメリカの戦闘機に高い運動能力で挑んだ零戦を連想させる。
ピュアスポーツカーを極め、コーナーで圧倒的な存在感を見せたFD3S型。しかし、一方ではパフォーマンス面でもライバルと互角以上に渡り合うため、さらなるパワーを求めるユーザーは存在した。とくにアメリカ市場ではその傾向が顕著であり、大胆なカスタマイズが施された車両も見受けられた。
今回オークションに出品されたFD3S型も、さらなる高出力化を目指してあれこれ手が加えられたUS仕様の1台である。1993年にアメリカで新車登録されたあとに大幅な改造が施され、その後日本に逆輸入。さらなる彩りが与えられたのち、2024年にイギリスに渡っている。

軽量ロータリーを捨て、シボレー製V8エンジン換装で弱点を補完したスペシャルモデル
最大の見どころは、ボンネットの下に収まるパワーユニットだ。純正の13B-REW型ツインターボエンジンの代わりに、シボレー「コルベット(C5型)」用のLT型5.7リッターV型8気筒OHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンを搭載。最高出力は345ps(13Bターボは255ps)だが、最大トルクはなんと48.4kg-m(13Bターボは30.0kg-m)まで底上げされ、1200kg台後半の軽量なボディと相まって、ストレートでもライバルに負けず劣らないパフォーマンスを獲得している。
ひとつだけ残念なのは、このLT型エンジンは本体が鋳鉄製でヘッドのみアルミニウムとなり本来の13B-REWに比べると100kg以上の重量増となっている点だ。とはいえ、アメリカでは大幅な加工なしで搭載できる定番のパワーアップメニュー「V8スワップ」として、RX-7にシボレーV8エンジンをコンバートするこのメニューは一時高い人気を誇ったという。実は余談だが「V8スワップ」にもいくつかメニューが存在し、一番人気はLT型エンジンの後に登場したオールアルミの「LS1型(5.7L)」や現代の「LT1型(6.2L)」にスワップするものだ。これらは補機類付きでもエンジン重量は約200kg〜220kgに収まるという。これなら13B-REW(約140kg)+大型インタークーラー+フロントパイプ等の重量と比べると、「プラス50kg〜70kg程度の重量増」で済み、FD3Sの最大の武器である「50:50の理想的な前後重量配分」と「軽快なハンドリング」への影響も最小限にとどめられるからだという。
エクステリアは人気の後期仕様ルックに、フロントリップ、サイドスカート、リアアンダーディフューザーをローマウントして装着している。前後のフェンダーはさりげなくワイド化されるなど、絶妙なバランス感覚で仕立てられている。
足もとにはワーク「エモーション」の20インチホイールに30扁平タイヤをセットし、車高調(車高調整式サスペンション)で限界までローダウン。光の加減でグリーンが浮かび上がるメタリックペイントも採用されており、ビジュアル重視のJDMスタイル(日本独自のカスタムスタイル)でセンス良くまとめ上げている。

自分の理想に合ったカスタムされたクルマを買うことは夢を叶える最安&最短コース
インテリアは、シートに当時感漂うBRIDEの「BRIX」を左右に装着している。リアスペースにはロールケージを組み込み、出力向上に合わせてボディ剛性を強化している。トランスミッションはGM製の6速MTに換装し、エンジンスワップで純正メーターが動かなくなったため、ステアリングコラム上にレース用メーターを追加している。さらにエアコンやパワーウインドウなどの快適装備も問題なく作動しており、デイリーユースにも対応できる実用性を備えている点も魅力的だ。
性能やルックスを含めて隙なくコーディネートされたこの「カスタマイズ・ド・セブン」には、1万4000ポンドから1万8000ポンド(邦貨換算価格で約298万円から約383万円)の推定落札価格が設定されていた。そして、オークションの結果は、ほぼ予想通りの1万6875ポンド(約359万円)で落札されている。

クラシックカーオークションの世界では、カスタマイズされたクルマは低評価に終わることは少なくない。しかし、自ら手を入れて楽しみたい人にとって、理想に近い車両が出てきたのなら話は別である。一からモディファイするよりも何倍も安価に理想へと近づける。もちろん、正確な整備履歴が分からないことに不安はあるが、それでもこのFD3S型に費やされたカスタマイズ費用は、落札価格を大きく上回っていることは間違いないだろう。そう考えれば、今回の落札者にとっては魅力的な価格だったといえるのかもしれない。














































