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わずか20年足らずで半減! ガソリンスタンドの廃業が後を絶たないワケ

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

エコカーの普及で燃料消費量が減少

 エンジンの高効率化か、電気自動車(EV)の普及か、環境問題に対して白黒をつけようとする議論が後を絶たない。先般も、マツダが九州大学との共同で、ウェル・トゥ・ホイール(Well to Wheel・油田からタイヤを駆動するまで)でのCO2排出量を比較してみせた。そして、一方ではエンジン車の燃料を供給するガソリンスタンドの件数が、年々減少の一途をたどっているのである。

 ガソリンスタンドの件数は、バブル期の1990年代前半では6万件以上。それが今日では半数の約3万件となっている。最大の理由は、クルマの燃費が良くなりガソリンが売れなくなったため。過去10年だけを見ても、ガソリンエンジン車で20%ほど燃費が向上している。すなわち、ガソリンの売り上げが2割ほど減ることを意味している。なおかつ、エンジン車の2倍の燃費性能とされるハイブリッド車(HV)が加われば、さらに燃料の売り上げは落ちるわけだ。

 そのほか、ガソリンスタンドの地下に埋めてある貯蔵タンクは、40年を目途に交換が必要。タンクの交換には、数千万円の費用が掛かるといわれており、敷地をコンクリートなどで舗装してあるため、それらを一旦はがしてタンクを入れ替え、再度舗装し直さなければならないので、非常に大掛かりな工事となる。

 新車の燃費向上でそもそも売り上げが落ちているガソリンスタンドに、それだけの投資をする蓄えも無ければ、借金できても返済する可能性は低くなる。したがって、廃業するガソリンスタンドが後を絶たないわけだ。

 ガソリンスタンドの廃業は、人件費などを抑えるセルフ式においても維持は難しい。なおかつ、ガソリンスタンドの件数を示す統計値は、廃業を明らかにしたスタンドを数えているため、廃業はしたが敷地をそのままほったらかしているスタンドは廃業の数字に加えられていない。実際には3万件という数値以上に現実のガソリンスタンドの件数は減っている可能性がある。

 なぜ、廃業しても届を出さずほったらかしにするかといえば、廃業して他に土地を転用するためには、土壌改良が必要で、廃業するにも費用が掛かるのである。地下タンク交換の義務付けは2011年からのことで、それまで永年の営業で燃料が漏れだしていないとも限らない。したがって、ガソリンスタンドの廃業には土壌改良が不可欠といわれているからだ。

 こうなると、効率の良いエンジン車かEVかという環境問題の論議と別に、使い勝手がいいかどうかの目線でクルマの商品力を消費者が見るならば、エンジン車はますます燃料補給がしにくくなり、使うのが面倒なクルマとなっていきかねない。

 一方、EVなら自宅で充電すれば済むし、課題となっている集合住宅の管理組合の合意が得られず自宅で充電できない場合でも、新車販売店や、商業施設などに今後も増えていくであろう急速充電器が、最寄りに整備されていく動きは加速するだろう。急速充電器はすでに7600か所に設置され、普通充電器と合わせると全国に2万9700か所の充電設備が整備されている。すなわち、既存のガソリンスタンドの件数とほぼ同数になってきた。

 今後、輸入車もEVの導入がはじまると、販売店や輸入車に乗る人たちの立ち寄り先に急速充電器の数がさらに増えていくだろう。そして、ガソリンスタンドと充電設備との数の上での逆転が起こるはずだ。

 環境問題を視野に、エンジンはいまや熱効率で40%を超えることが現実となりつつあり、燃費もさらに改善されていく。しかしながら、燃料消費量を減らすことに直結。さらにガソリンスタンドを廃業に追い込むことになるのである。

 給油の不便さを懸念し、タンクローリーから直接ガソリンを補給する特区を設けるなどの施策も考えられているが、そもそも、着火性が高く、一旦火が付けば爆発的に燃え広がるガソリンを、タンクローリーから給油する安全策は万全なのだろうか。それが難しいからこそ、地下タンクに納めたガソリンを、給油ポンプというスタンド施設を使うことで安全を確保してきたはずだ。

 効率を追求し、燃費を良くして環境性能を高めれば高めるほど、エンジン車の時代の終わりを促すことになるのである。

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