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オートマでもサーキットは楽しめる? AT&CVT限定クラスで盛り上がる軽自動車レースの世界

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭

スポーツ走行を気軽に楽しむ選択肢

「スポーツ走行を楽しむならばMT車」。昔は当たり前だった言葉も今や死語になりつつある。新車の大半をATまたはCVTの2ペダルが占める現在、「MTじゃなければ走りを楽しめない」なんて考えはナンセンス。AT&CVTで走りを満喫する、ドライバーに本音を聞いてみよう。

増加しつつあるATだけの限定クラス

 乗用車どころかトラックやバスもMT(マニュアルトランスミッション)を採用するモデルが減り、新規で運転免許を取得する人の約6割が”AT限定”といわれる現代。モータースポーツにも少しずつではあるが、AT&CVTだけのクラスが増えている。その先駆けといえるイベントが、軽自動車によるレース『東北660選手権』だ。

 開幕した2011年の初戦からATクラスを設定、2020年で早くも10シーズン目を迎える。きっかけは、ATのダイハツ・エッセで走っていたドライバーから届いた「なんとかAT&CVTのクラスを設定してもらえないか」という意見だった。今後、ATやCVTの比率は高まるのは間違いない。「ATは面白くない」という風潮では、走ってみる前にあきらめてしまうだろう。また、走らせてもMTと一緒では気後れしている人が多いのも事実。この意見に、もっともな考えだと納得した主催者は、台数が少ないのを覚悟で独立クラスを設けた。当初は発案者である玉川澄人さんひとりだったが、賛同するプロショップが少しずつ増え、今や他のクラスと変わらず熱いバトルな繰り広げられている。

 玉川さんによると当時たまたまAT車のエッセに乗っており、幸か不幸か本格的なモータースポーツの経験もなく、ATに対する先入観がないまま走り始めたという。それでも十分にスポーツ走行は楽しめたが、タイム的にはやはりMTのトップ勢には届かない。しかしATとCVTだけのクラスがあれば、参加するための心理的なハードルが大きく下がるし、競い合ってレベルも確実に上がるはず。実際に10年の間でタイムは飛躍的にアップし、2ペダルならではのテクニックやセッティングも生まれ、もはや「ATでサーキットを走ってもつまらない」なんて言うエントラントは皆無だ。

 ちなみにシフト操作なんて不要だと思い込んでいる人も多いが、実際はDレンジだけで走ることはなく、メーカーによって呼び名は違うものの「スポーツモード」を多用するという。さらに「左足ブレーキ」もAT&CVTでは必須といえるテクニック。エンジンの回転数を高いまま維持しつつ、コーナーを曲がれる速度に落とすためのワザで、CVTのように自動で最適なギヤを選択しないクルマでは特に重要と玉川さんは話す。ただし、最近のクルマはアクセルとブレーキのペダルを同時に踏むと、制御が働いて回転数が上がらないクルマもあるので、その場合は不利を承知で左足ブレーキは封印せざるを得ない。

 また、ミッションの耐久性も1時間くらいの全開走行ならば問題なく、唯一の補強ポイントはAT/CVTクーラーの装着とのことだ。それも壊れることを恐れてのカスタムではなく、フルードの温度が上がって補正が入ることでクルマが遅くなることを避けるため。他のマシンメイクはMT車と一緒だし、かかる費用も変わらない。

 東北660選手権が始まってからの10年。いまでは、AT限定クラスがある走行イベントは公式、非公式を問わず増加の一途をたどっている。走る楽しさは同じで、MTの縛りを外せばクルマの選択肢だって飛躍的に増える。これからは仕方なくAT&CVTじゃなく、狙って選ぶ時代がやって来るかもしれない。

 

AT&CVTで楽しむ、玉川さんの声

 東北660選手権のAT&CVTクラスは、ダイハツのミライースやミラ、スズキのアルトなど多種多様なマシンが参加している。過去にはスズキのツインやスバルR2といった変わり種がエントリーして活躍したこともある。

 2011年7月23日。スポーツランドSUGO(宮城県)で行なわれた記念すべき1戦目。玉川さんは唯一のATクラスとしてエントリーした。当時はまだ強く推奨レベルだったロールケージを早くも装着、安全に対する意識も高かった。

 

 2010年に行なった耐久性のテストでは、玉川さんは愛車でサーキットを連続走行し、スプリントレース程度の周回数なら問題ないことを実証した。低出力な自然吸気エンジンだからかもしれないが、高温になってオートマが滑るような症状もなく最後までノントラブルだったそうだ。

 ATとCVTを比較すると、CVTのほうがトルクのある回転域を常に使えるため、ATより有利だろうとのこと。ただし、実際のレースではATも優勝しており、コースレコードを記録しているのもエッセ(AT車)だ。ドライバーの腕とセッティングで十分に戦えるだろう。

 下写真はクラスの先駆者である玉川さん。2014年からはトヨタのピクシス・エポックに乗り換え、鮮やかなカラーリングでもギャラリーを楽しませている。クルマ作りもほぼDIYと走りだけじゃなく作業も含め楽しむ。

 そして、2019年にシリーズチャンピオンを獲得した山田敬裕さん(下写真右)。元々はMTクラスだったが玉川さんを追いかけ、ミライースを購入して参戦4年目からクラス変更した。「面白さはMT車とまったく変わりません。これからは2ペダルですよ!」と力強く語ってくれた。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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