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「GT-R」と張り合ったマツダ「ファミリアロータリークーペ」羊狼の心臓は「コスモスポーツ」と同じ2ローターREでした

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

コンパクトなボディにハイパワーなエンジンを極めたファミリア・ロータリークーペ

 具体的に、コスモスポーツが搭載していたREは2ローターの10A型。排気量は982cc(491cc×2ローター)で最高出力は110psとされていました。REの排気量計算は少し複雑なので、ここでは簡単に紹介することにします。

 REにおいて一般的な4サイクルのレシプロ・エンジンのクランクシャフトに相当するのはエキセントリックシャフトです。4サイクルのレシプロ・エンジンではクランクシャフトが2回転する間に1回だけ、排気量分の吸気を行ってこれを圧縮して爆発させるのですが、REではエキセントリックシャフトが1回転する間に1回、排気量分の吸気を行ってこれを圧縮して爆発させています。マツダロータリーエンジン(10A)

 つまり(クランクシャフトに相当する)エキセントリックシャフトが2回転する間に、2回分の吸気→圧縮→爆発→排気を繰り返しているので、実排気量の2倍に相当する、というのが内燃機関工学的な考え方となっています。

 例えば10Aエンジンの排気量を表すときに491cc×2×2という表記となるのは単室容積の排気量(491cc)にローターの数(2)を掛けて2ローターのユニット全体での排気量とし、その数値にさらにREの排気量換算係数(2)を掛けているのです(なお、自動車税課税時の排気量区分を換算する場合は係数1.5を掛ける)。

 ちょっと話が小難しくなりましたが、REが小さな排気量からハイパワーを生み出すことには変わりありません。さらにエンジン・ユニットのコンパクトさでもレシプロ・エンジンの比ではありませんでした。2座オープンのレーシングカーで争われていた富士グランチャンピオン(GC)レースで、BMW製の直4エンジンから2ローターのREにコンバートすることになった某ドライバーが、エンジンルームを見て「俺のエンジン、どこに行っちゃったんだ!」と慌てた、というエピソードは有名。実際に2ローターのREは、BMWの直4の、クランクケースほどのサイズだったともいわれていました。

 そのことは、最初に2ローターの10Aユニットを搭載したコスモスポーツや、それに続いて10Aを搭載していたファミリア・ロータリークーペがコンパクトなボディだったことからも明らかです。そして海外のレースに参戦して技術を磨いたコスモスポーツに続いて、ファミリア・ロータリークーペも海外レースで活躍し、「RE恐るべし!」をアピールすることになりました。

ニュルブルクリンク84時間レースで5位入賞

 具体的には1968年にコスモスポーツがRE搭載車として初挑戦したニュルブルクリンク84時間レース(=マラソン・ド・ラ・ルート)には、翌1969年にファミリア・ロータリークーペが参戦。3台で挑んだうち2台は途中リタイアとなったものの、残る1台が5位入賞を果たしています。

 また、その1カ月前に行われたスパ-フランコルシャン24時間レースでは片山義美/Y.デプレ組と片倉正美/武智俊憲組が5~6位に入賞。翌1970年にはこの2レースに加えてRACツーリストトロフィーレースにも参戦。上位入賞という結果を残しています。

 一方、1970年あたりからは国内レースにも姿を見せるようになり、スカイラインGT-R勢を相手に、今も語り継がれる死闘が繰り広げられました。言うならばファミリア・ロータリークーペは、当時のカローラやサニーに相当するコンパクトなボディに、2リットルクラスに匹敵するエンジンを搭載したホットモデルだったのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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