5位:1034万5000ドル(約14億円)/1937年式ブガッティ・タイプ57SCアタランテ
これもブガッティ・タイプ57SCアトランティックと並んで、アールデコ期の空力ボディの傑作とされるひとつ。じつは9年前の2013年にも同じモントレーのオークションにて874万5000ドルで落札されたが、エンジンはレストアされているという。聞くところでは、タイプ57SCで工場にてスーパーチャージャーが取り付けられたのは4台のみ、うちアタランテは2台のみとされる。
4位:1342万5000ドル(約18億1200万円)/1937年式タルボ・ラーゴT150-C-SSティアドロップ・クーペ
ブガッティを超える落札価格で取引されるフレンチ・ヴィンテージ・スーパーカーとなったのは、戦後しばらくは存続したタルボ。これはアールデコ全盛期にフィゴーニ&フラスキというパリ郊外の有名なカロッツェリアが仕上げた「グート・ドー(水滴)」型のボディで、16台が製作されたうちフロントフェンダーまで覆われているタイプは2台のみ。しかも、こちらはオリジナルゆえについた高値といわれる。
3位:1463万スイスフラン(約20億5000万円)/2003年式フェラーリF2003-GA
V10時代の官能的エキゾースト、かつミハエル・シューマッハが乗ってドライバー&コンストラクター双方とも2003年のタイトルを独占したのみならず、GAはフィアット・グループ総帥でこの年に亡くなったジャンニ・アニェッリのイニシャルでもある。しかもシャシーナンバー229のこの個体は、ホームのモンツァでポール・トゥ・フィニッシュを決めたそのもので、日本GPでの8位フィニッシュによってシューマッハがファンジオの5回を破る6回目の年間ドライバーズタイトルを手にしたマシンでもある。イタリアに近いジュネーブで行われた競売だったこともあって、ここ最近のF1カーでもっとも高騰して当然のサラブレッドといえた。
2位:2205万5000ドル(約30億円)/1955年式フェラーリ410スポーツ・スパイダー・スカリエッティ
まずスカリエッティの美しいボディは決め手のひとつで、ランプレディ・ユニットのV12を積む1950年代のスポーツレーシング・フェラーリだが、ボア×ストロークを変更して4961ccにまで拡大。これはいまだマラネロ史上最大となる排気量のV12で、しかも4基のうちワークス2台だけがツインスパーク化されていた。
すべては1955年の世界スポーツカー選手権のためだったが、ル・マンの大事故のためカレラ・パナメリカーナとニュルブルクリンク1000kmは中止。そのため1956年ブエノスアイレス1000kmで地元のヒーロー、ファン・マヌエル・ファンジオが駆った。アルゼンチンではリタイアを喫したが、その後カリフォルニアに渡ったこのクルマはキャロル・シェルビーにSCCA王者のタイトルをもたらすなど、伝説のアメリカ人ドライバーとも逸話を作った。なかでもフィル・ヒルがハワイでのレース前に移動中、165.12マイルの速度超過をやらかした時の違反書類付きだった点も、競売を盛り上げた。
1位:1億3500万ユーロ(約189億円)/1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペ
2位より5倍以上も高額な落札値。この特別すぎる300SLR以前、ヒストリックカーとして最高落札額は、2018年にフェラーリ250GTOにつけられた4880万ドル(当時のレートで約55億円)だったのだから、いかに史上最高額のクルマとして飛び抜けていたかがうかがえる。
要因は3つ。まず、クルマの出所がシュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムという公式コレクションからの放出案件だったこと。ふたつめは市販車でもレース車両でもなく、メルセデスのレース部門と開発部門のボス、ルドルフ・ウーレンハウトが特別あつらえさせた2台のクーペの内の1台という希少なモデルだったこと。最後の理由は、今回のオークションはメルセデスが次世代のイノベーションの種となるプロジェクトに資する「メルセデス・ベンツ基金」を立ち上げるためのものだったが、その目玉がこのクルマであり、それこそ空前絶後の機会であることが意識されたためだろう。買えたこと自体がラッキー、という感覚なのだろうか。