希少なオプションパッケージ車、再び1億円オーバーで落札!
ディーノGTの進化はその後も続き、1972年のジュネーヴ・ショーでは特に北米マーケットからのリクエストに応えて、デタッチャブル式トップを装着したスパイダー版「246GTS」が追加デビューし、結果としてシリーズ最終期の生産の多くを占める大ヒット作となった
2023年3月4日に開催された、第24回RMサザビーズ“AMELIA ISLAND”オークションに出品されたシャーシNo.#08302も、北米市場のために製作された246GTSの1台である。
フェラーリの世界的権威マルセル・マッシーニ氏のレポートによると、「ロッソ・キアーロ」のボディに「ベージュ(Beige)」のコノリーレザー製インテリアを組み合わせた、この米国市場のディーノは1974年5月31日に完成したとのこと。かつて、世界的なクラシックカー・コレクターとしても知られた故ビル・ハラーがネヴァダ州リノで出店していた“Modern Classic Motors”を介して、カリフォルニア州の顧客に販売された。
その後は1978年に2代目オーナーのもとに譲渡され、2011年までマリブに住む個人オーナーが所有。そののち10年間は複数のオーナーのもとを渡り歩き、2022年に今回のオークション出品者である現オーナーの手に渡ったと記録されている。
また、マッシーニ氏のレポートでは「デイトナスタイル」の本革シートと、マグネシウム製のカンパニョーロ社製ワイドホイール+14インチタイヤと、それを収めるための幅広のホイールアーチを与えられ、246 GTSではもっとも望ましいとされるスペック。
主に北米市場向けのパッケージオプション仕様だった「チェア&フレア(Chairs and Flares)」の1台であること。またエアコンやパワーウィンドウなどのオプション装備が、こちらも新車のときから充実していることも記されているという。
そして重要なポイントとして挙げるべきは、この車両が「フェラーリ・クラシケ」にて正統性をフェラーリ本社に証明されていること。そのレッドブックに、エンジンとギアボックスがマッチングナンバーであることも記されていることである。
また、車両に添付されたドキュメントには、2009年から2022年までの請求書のコレクションがさらに含まれており、過去10年間にこの246GTSに惜しみなく費やされたケアのレベルの高さも明示されている。
さらには、前述のクラシケバインダーに加えて、オーナーズマニュアル、保証書、オーナーズサービスブック、ツールキットなどの純正付属品が完備していることも、この個体の正統性を裏づける、極めて重要な要素となっているのだ。
予想を裏切らない高値安定の「チェア&フレア」
新車デリバリーの際に「チェア&フレア」の両方のオプションとともに製造された246GTSは150台未満とされ、市販版ディーノGTの中ではもっともレアとされる206GTに匹敵する希少車となった。
それゆえ、近年のクラシックカー国際市場では206GTに準ずる高価格で取り引きされる事例が多く、2022年8月のRMサザビーズ「MONTEREY」オークションでは、80万2500ドル──当時のレートでは約1億1100円で落札されている。
それから約半年後、同じアメリカでの出品であることから、今回の「AMELIA ISLAND」オークションでも高値を予想する声が多かったが、案の定というべきか75万8500ドル──邦貨換算約1億100万円で小槌が落とされたのである。