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「フィアット500」をヨットに積んで海遊び!?「ビーチカー」の始祖「ジョリー」は貴族の道楽から生まれました【夏のビーチカー_01】

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: Stellantis

自分の船に乗せて散策するためのアシとして製作

そんなジャンニ・アニェッリが考えたのは、自分の船に載せられる程度のサイズで、港につけばその界隈を気軽に散策できる気の利いたアシがあれば楽しかろう、しかも他の誰も所有していないワンオフものならなおのことよろしい……。というわけで、デビュー間もない2代目フィアット500をベースに、カロッツェリア・ギアに作らせたのがフィアット500ジョリーというわけだ。

その目的に合うように、元の500の屋根とサイドパネルは切り取られ、もちろんドアも外された。ルーフの代わりにフリンジが付いた日除けの天幕が張られ、濡れた水着のままでも運転できるようにと、シートは籐細工となっている。

車名となったジョリー(Jolly/陽気な)という名称はまさにこのクルマのキャラクターを表しているが、それと同時に道化師(ジョーカー)や小舟(ディンギー)といった単語の持つニュアンスも含まれているとも言われる。

世界のセレブたちの間で大ヒット

もともとジャンニ・アニェッリが自分専用の「特注おもちゃ」として作ったフィアット500ジョリーだったが、「イタリア貴族の末裔が自分のヨットに面白いクルマを載せてあちこちのリゾート地に出没するの図」は、当時の社交界で思いのほか大きな話題になったようで、ジャンニ・アニェッリと親交のあった欧米の王侯貴族や富豪、ハリウッドの映画スターなどが競ってこの「特注おもちゃ」を所望するようになり、フィアット(というかジャンニ・アニェッリ?)は、このジョリーをいわば「裏メニュー」的に用意するに至った。

価格は通常の500の倍、活躍できる場所もタイミングもごく限られるにもかかわらず、この500ベースの他に兄貴分の「600」や「ムルティプラ」をベースにしたモデルも作られ、その合計は一説には700台とも言われている。

贅沢な貴族趣味の発露として、1957年に作られた1台のフィアット500ジョリー。その生まれた経緯から使われ方まで、このモデルこそがまさにビーチカーのルーツだと改めて思う夏である。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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