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納屋物件フェラーリ! 事故車でも1000万円オーバーの「308GTBヴェトロレズィーナ」は適正価格なのか?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

タイムカプセルから取り出されたような個体ながら、落札価格は振るわず

このほどRMサザビーズ「Monteley」オークションに、「Lost & Found Collection」の1台として出品されたフェラーリ308GTBは、1976年6月に完成し、かつては世界一のフェラーリ・ディーラーとして君臨していたルイジ・キネッティを通じて、アメリカ合衆国内で新車デリバリーされた個体とされる。

1978年には、ニューヨーク在住の初代オーナーによって、「Ferrari Market Letter」にFor Sale広告が出された際には「赤ボディにベージュの内装、走行距離はわずか3000マイル(約4800km)」と自己申告されていた。

また、のちに長年この個体を保有することになるウォルター・メデリン氏が1979年4月に入手する直前、ジョージア州タッカーの「FAF Motorcars」社によって売りに出され、この時点での走行距離は5200マイル(約8400km)と説明されていた。1980年頃に撮影された写真には、現在と同じロッソ・コルサのボディカラーに、「タン」および「ネロ(黒)」のインサートが入った本革レザーインテリアという、クラシックな組み合わせが記録されている。

ところが、そののち使用される機会は限られていたようで、今回のオークションカタログ作成時にオドメーターが刻んでいた走行距離は、わずか9587マイル(約1万5400km)だった。

そして、ハリケーンによる損傷か、あるいはそれ以前の事故によってかは不明だが、スカリエッティ製グラスファイバー製ボディワークは、フロントガラスと同様にダメージを受けていながらも、希少な308GTBヴェトロレズィーナのほぼ完全な一例であることに変わりはない。しかも、ナンバーズマッチのエンジンとギアボックスが残されていることから、魅力的なレストアベースとなるだろう。

インテリアには「ヴェリア・ボレッティ」社製の純正メーターがフル装備され、ダッシュボードにはカセットデッキつきの独「ブラウプンクト」社製AM/FMラジオが取り付けられている。さらに運転席側には、これも当時の純正指定パーツだった「ヴィタローニ・カリフォルニア」ミラーが残されているほか、この時代のフェラーリのアイコンともいうべき5本スポークのアロイホイールも、4本ともにオリジナルが装着されている。

もちろん写真を見れば一目瞭然ながら、ランニングコンディションを取り戻すためには、ボディ/インテリアは当然のこと、エンジンや燃料系、潤滑系に電気系などあらゆる部位で大幅なリニューアルを必要としているのは間違いない。

フェラーリ308GTBヴェトロレズィーナ

それでも、タイムカプセルから取り出されたようなオリジナリティは魅力的な要素になり得ると判断したのだろう。RMサザビーズ側では12万5000ドル~20万ドルという、かなり強気なエスティメート(予想落札価格)を設定していた。

ところが、2023年8月17日に「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」の条件で行われた競売では、予想以上にビッド(入札)が進まなかったのか、予想をはるかに下回る7万8400ドル、日本円に換算すれば約1140万円という、比較的穏当な価格でハンマーが落とされることになった。

いくら希少なヴェトロレズィーナとはいえ、じっくり待てばほかにも選択肢がありそうな308GTBで、これから莫大な投資を要するであろう個体をあえて選ぶことはない……。それは、とても賢明な判断だったとも思われるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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