サロン・プロヴェで最優秀プレミア・スーパーカーのタイトルを受賞
その後「39006」はカンポガリアーノの本社工場へと戻され、4WDシステムと新しいエンジンを搭載することになる。「0026」のエンジンナンバーを持つ新たなパワーユニットは、それまでブガッティが別のプロトタイプである「GT007」に使用していたもので、「39006」はその後もさまざまなカスタマーからのクレームや質問に答えるため、このモデルを参考に適切な解決策を開発し、のちのモデルに反映させていったのだという。
1995年、ブガッティが財政難に陥った時にも、このプロトタイプは彼らのもとに残されたが、1997年12月にはオランダのカスタマーに売却されることになる。その後このカスタマーは、ドイツのダウアー・レーシングに全面的なメンテナンスを依頼。公道走行が可能なレベルにまでコンディションを回復することを約束した。
ちなみにル・マン24時間レースを制したことでも有名なドイツのダウアー・レーシングはブガッティが解散後、残された未使用部品のほとんどを買い取り、それを使用してダウアー仕様のEB110を製作したことでもよく知られている。
1995年5月、「39006」はオランダのユトレヒトに在住する2代目のオーナーに譲渡された。その後2015年までの間にイギリスで登録され、同年7月にはイタリアのカンポガリアーノでエドニス・V12の開発と生産で有名な、Bエンジニアリング社に送られ、再び本格的なレストアを受ける。2015年のサロン・プロヴェで最優秀プレミア・スーパーカーのタイトルを受賞したことなどは、このモデルの最も輝かしいヒストリーのひとつといえるだろう。
現在の走行距離はわずかに3528km。オリジナルの保証書や車両技術データシートなど、ドキュメントもすべて完備されていることを考えると、このEB110SSプロトタイプは、あらゆる意味で注目に値する1台といえるだろう。先日開催されたRMサザビーズのニューヨーク・オークションでは落札されなかったこの貴重なモデルは、現在でも同社のプライベート・セールで購入が可能である。