定期的にメンテナンスが施された1台
1979年に当時の経営者であったルネ・マイラーの依頼で「1121070」のシャシー・ナンバーを持つ、1台のカウンタックが製作された。メタリックブルーに塗装され、ブルーのシート表皮がマッチしたこのモデルこそ、「カウンタックLP400S」の第一号車(シリーズ I )である。
このLP400Sは工場からデリバリーされることなく、1981年のジュネーブ・ショーに出品するためにさらにアップデートが施された。キャビンにはホワイトのトリムが与えられ、ホイールもシリーズ II 用のものに変更。リアスポイラーと、ボディカラーに合せたヴィタローニ・ベイビー・トルネード・リアビュー・ミラーも、この時に追加されている。
こうしてシリーズ II となった「1121070」には、新たに「1121272」のナンバーが与えられ、シャシーやエンジンのナンバリングも変更。1981年式のシリーズ II がここに誕生したのだ。
またこのモデルにはウエーバー製の45DCOEキャブレターやアンサのレーシング・エグゾースト、ワイドタイヤ、さらにはレーシング・カムシャフトといった、特別なオプションが装着されていたという説もある。
ちなみにランボルギーニは、1981年6月にはボディを30mm高めたハイボディのLP400Sを発表(シリーズ III )。その乗降性や乗車時の快適性は大幅に向上した。
ジュネーブ・ショーの会場で、あるスイスのカスタマーに購入された「1121272」は、その後2004年には現在のオーナーの手にわたり、レッドに塗装されていたボディカラーも、オリジナルのメタリックブルーに再塗装されている。
その後もレストアの作業は毎年のように続き、2014年にはミッドのV型12気筒エンジンの完全なオーバーホール、2018年にはクラッチとエアコン、最近では2023年にフロントアクスルやブレーキ、アライメントの修正、キャビンのディテールアップも行われている。現在までの走行距離は4万2600km。新車での生産から「1121272」として現在に至るまでの特別なストーリーは、車両とともに売却される各種のドキュメントでそれが証明されるという。
注目の落札価格は62万1000ユーロ(邦貨換算約9940万円)。当面大きな整備の必要がないことを考えると、これは意外にお買い得な1台といえたのかもしれない。