老若男女をニコニコさせる力を持つチンクエチェント
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第42回は「チンクエチェントは、あらためて偉大な存在」をお届けします。
輸入車ショーにゴブジ号を展示
2021年10月16日。“プレミアムワールド・モーターフェア”の開催日。毎年秋の土日の2日間、静岡市のランドマークのひとつといえるツインメッセ静岡の会場内に、年によって違うけど60〜80台のインポートカーが展示される、静岡版の輸入車ショーだ。
2018年の秋にアルファ ロメオ浜松の新しいショールームがオープンしたとき、オープニングイベントでアルファに関するトークをさせていただいたのだけど、その会場にプレミアムワールド・モーターフェアの主催者である塩坂直仁さんが来場されていて、声をかけていただいた。以来、毎年トークのゲストとして呼んでいただいてる。
ゆったりじっくりクルマを見て回ることができるガチャガチャしてない雰囲気の展示イベントで、そこも気に入ってるのだけど、何より僕は塩坂さんの人柄に惹かれていて、夜に静岡おでんなどつついて一杯やりながらいろんなことを話すのが毎年恒例のお楽しみだったりする。もちろん仕事としてトークをするのもお楽しみのひとつで、僕にしては意外やマジメなことをしゃべっていたりもするのだ。……いや、ホントだってば。
来場者はニコニコした表情でゴブジ号を眺めていた
塩坂さんはどうやったらイベントを少しでも盛り上げていけるのかということを常に考えておられる方で、どういういきさつでそうなったのかは覚えていないのだけど、この年は会場内にゴブジ号を展示させてもらうことになったのだった。“フィアット”だとか“500”だとか“チンクエチェント”だとか、そういう呼び名とかは知らなかったとしても、この特徴的なスタイリングに見覚えがあるという人は少なくない。お子ちゃま連れのお客さんもたくさん訪れる。だから、記念写真コーナーみたいにできたらいいな、というお話だ。
土曜日の朝、開催時刻の30分前に会場入りしてゴブジ号のところに向かう。すかさず下回りをチェック。ゴブジ号の状態を伝えてあったので、塩坂さんは仮にオイルがポツリポツリと垂れたとしても直接フロアを汚さずに済むような対策をしてくれていた。が、一滴も垂れてない。スティルベーシックのふたりの平井さんの心配りには、ただただ感謝、である。
この2日間、僕はトークをしてるときを除いて、ほとんどの時間をゴブジ号のそばで過ごすことにした。何せ記念写真コーナー。興味を持ってくださるお客さんにはクルマのことを説明したいし、ドアを開けてシートに座ってもらい、50年以上も昔のクルマのシンプルさというのをちょっとでいいから体験してもらえたらいいな、と思ってたからだ。もちろん、“綺麗どころのお姉さんじゃなくてスンマセン”なんて言いながら、シャッター係も務めさせてもらった。チンクエチェントの屋根はポッカリと開くオープントップ。その上からスマホやデジカメをシートに座ってる人に向けると、なかなかいい雰囲気に撮れたりもするのだ。
せっかく会場に置かせていただいたのだから、僕としてはお客さんの反応を知りたかったし、ちょっと話も聞いてみたいな、なんて思うところもあった。このちっぽけなお供え餅みたいなカタチをして『もーれつア太郎』に出てくるデコッパチに似た顔をしたクルマは、果たしてどんなふうに受けとめられたのか……。
それが、だいぶ好評だったのだ。皆さん、ニコニコした表情でゴブジ号を眺めてる。写真を撮りながらいろんな人とあれこれ話をしたのだけど、なるほど……と思わされることが多々だった。
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