ベースは1992年製ローバー ミニ 99X
ブリキのおもちゃのように可愛いクラシックな佇まいのローバー「ミニ」。でもよく見ると、普通のミニとはちょっと違うような……。じつはルーフを切って車高を低くしてモディファイした「ミニ スプリント」と呼ばれるカスタムモデルなのでした。2年ほど前にこのクルマを手に入れたオーナーに話を聞くと、数奇な出会いの物語がありました。
イタリア製サンルーフを備えたミステリアスな個体
「クラシック・ミニは、ずっと乗ってみたいと憧れていたクルマです。そして色もシルバー限定でした。ブリキのおもちゃみたいで可愛いじゃないですか」
というのは、2025年3月2日、「ミニの日」に筑波サーキットで行われた「ミニ カーブーツ ミーティング」でボランティアスタッフのひとりとして、朝早くから場内でクラシック・ミニの交通整理を担当していた吉川さんだ。
来場者の誘導もようやく終わり、自身のクラシック・ミニのトランクリッド(これを英国ではカーブーツと呼ぶ)にちょうど水平になるよう天板をセットして、ポットを置いてコーヒースタンドの支度中のところ、お話を伺ってみた。
これが初めてのクラシック・ミニという吉川さんの愛車は、一見普通のミニとの違いはなさそうだが、何かが違う。
「気づいてもらえましたね! このミニはミニ スプリントと呼ばれていて、全高が低くなっているんですよ。私のミニは2インチ(約5cm)、ルーフが低くなっています」
このルーフのチョップトップは、前面投影面積を小さくして抵抗を減らして低重心化にもなる、競技での優位性を持たせたモディファイとして、1950年代くらいから行われていた手法だ。クラシック・ミニではスチュアート&アーデン社によるミニ スプリントが、その代表的なチョップドモデルである。
とはいえ、単純にガラスをカットするだけでなく、形状の変化のない屋根をそのまま下げるには、AピラーおよびCピラーの角度はもちろん、窓枠もそれに合わせる必要がある。単純な作業ではない。
「日本でも1990年前後にナリタガレージさんというビルダーで同じチョップド・ミニを作っているんですよ。それはGTSというネーミングでしたが、私のミニは1992年製のミニをベースに製作されたのは分かっているのですが、製造された時期やビルダーは不明です」
各部を見るとあまり目にしないイタリア製のサンルーフも装備されていることから、おそらく欧米でのモディファイかと思われるが、ミステリアスな部分も面白い。
偶然に偶然が重なって愛車となった
ちなみに、このミニ スプリントとの出会いも思い出深いという吉川さん。聞けば、お子さんが自立したことで、ミニに乗りたいという思いが再燃。ある日、地元・茨城県のショップ「ガレージルーフ」を通りかかると、イメージにぴったりのシルバーのミニを見つけたそうだ。さっそく入店して話を聞くと、ちょうど前日、売約がキャンセルになった直後だという。
「1日早く入店していたら、売約済みで諦めてましたよね」
そんな妙縁もあり、愛車となったミニ スプリントは吉川さんを虜にする。
「私は古着が好きなんですけど、クルマも洋服と一緒で自分をアピールするものだと思っています。たまたま巡り会ったスプリントは、ビンテージ古着との運命的な出会いにも似ているのも良いですね」
30年前からの憧れのクラシック・ミニのオーナーとなった吉川さん、まだ購入して2年にも満たないもの、全国各地で開催されるクラシック・ミニのイベントにも参加し、2年弱で1万7000kmを走っている。
「憧れていた以上のクルマでしたね! 何よりハンドリングが素晴らしい。これまでドライブと思っていたのは、ドライブではなくただの移動だと本当に思いましたよ(笑)。イベントに行く道中も楽しいですし、イベントで仲間が増えていくのも嬉しいですね」
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)