この旅で初めて、ミシシッピ川を見ながらドライブ
午後、次の目的地、ミズーリ州ハンニバルを目指して北上する。最短距離は州道70号線だが、『ロンリー・プラネット』に気になる記述があった。「イリノイ州アルトンからグラフトンの間は、ミシシッピ川沿いで最も美しいドライブコース」というのである。わずか20kmくらいだが、これは気になる。予定を変更して、左岸を上ることにした。
州道100号を走ると、すぐに記事の意味がわかった。アルトン~グラフトン間は、すぐ横をミシシッピ川が流れているのだ。考えてみれば、これまで川を見ながらのドライブはなかった。その意味で、たしかに貴重な道路ということになる。しかし、残念なことに前日からの雨が降り続いており、絶景とまではいかなかった。
ハンニバルの街はトム・ソーヤー一色
ミシシッピ川を舞台にした文学作品の代表といえば、『トム・ソーヤーの冒険』だろう。マーク・トウェインは47歳のときに、自らの少年時代をモチーフにこの作品を書き上げた。登場人物の多くが実在していたこともよく知られている。その物語の舞台がハンニバルなのだった。
ここで、「あれっ? トム・ソーヤーってもっと河口に近い地域の話だったのでは?」と思った人もいるだろう。筏に乗って冒険をする場面などから、ぼくも同様の勘違いをしていたが、実際はニューオリンズから1000km以上も上流の物語なのだった。
物語の時代は南北戦争以前でミズーリ州は奴隷制を支持していた。マーク・トウェインの育った家にも黒人奴隷がいたという。『ハックルベリー・フィンの冒険』において奴隷のジムが逃亡するシーンは、作家の贖罪ではないかという説もある。
ハンニバルの町はトム・ソーヤー一色で、ウォーキングツアーが楽しい。しかし、次の日も弱い雨は止まず、楽しみにしていたリバー・クルーズはあきらめて次の目的地に向かうことにした。次は、いよいよシカゴだ。
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このミシシッピの旅で筆者が取材した内容を1冊にまとめた本が2025年3月13日に発売となった。アメリカンミュージックのレジェンドたちの逸話とともに各地を紹介しているフォトエッセイ、興味のある方はぜひチェックを。
>>>『アメリカ・ミシシッピリバー 音楽の源流を辿る旅』(産業編集センター)
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