定期的にメンテナンスされてきた1台
ちなみにマニュアル・ギアボックス、左ハンドルという仕様の456M GTは、フェラーリの記録によれば688台が存在するにすぎず、今回オークションに出品されたモデルは2000年12月にパリの著名なフェラーリ・ディーラー、シャルル・ポッツィによってファースト・オーナーに売却され、パリ近郊の会社名義で登録されていた。
さらにポッツィには3204kmまでサービスを行っていた記録が残るが、その後2004年には所有者が変わりメンテナンスはフィオラノ・レーシングへ。2017年に行われたサービスでも走行距離は5166kmを記録するのみだった。
そして現在のオーナーにこの456M GTが渡ったのは2024年のこと。オドメーターの数字は6990kmに増えたが、それでもまだまだ新車に近いコンディションであることは確かだろう。
フェラーリが456M GTで見せた改良策。それはじつに積極的なものだった。エクステリアではフロントグリルの面積がさらに拡大されたほか、ボンネット上のエアアウトレットを廃止。ヘッドランプのカバーもフェンダーラインに合わせて、より立体的なデザインに改められている。アンダースポイラーが固定式となったのも興味深いところだが、じつはフェラーリは、この456M GTから自社の風洞実験装置による空力実験を開始している。エクステリアでのさまざまな変化は、それに実証されたものなのだ。
走行距離の少なさはおおきなセールスポイント
インテリアでも改良の跡は数多く見受けられる。それまでの456ではセンターコンソール上にあった水温計と油圧計は、視認性を高めるためにメーターパネル内に移動。550マラネロから受け継がれたマルチファンクション・ディスプレイもこのパネル内に装備されることになった。シフトレバーの位置やシートデザインも、より良好なドライビングスタイルを生み出すために改良された。
搭載されるV型12気筒エンジンの、442psという最高出力は不変だったが、エンジン・マネージメントは最新世代のものに改められた。フェラーリが456シリーズに新たに付けたMの称号、それは決してセールスのための飾りではなかったのである。それでは今回のオークションの結果はどうだったのだろうか。一般的にはやや人気薄ともされる456シリーズだが、Mモデルの6速MT仕様、しかも走行距離の短さはおおきなセールスポイント。グリジオ・チタニオのボディカラーにも、またベージュのレザーインテリアにも目立った傷みはない。
ボナムズがオークション前に掲げた予想落札価格は、9万ユーロ〜13万ユーロ(邦貨換算約1140万円〜2080万円)。そして実際の落札価格は12万750ユーロ(邦貨換算約1935万円)という結果だった。12気筒フェラーリの世界に足を踏み入れるのならば、それはとても魅力的な存在だったと評価できるのではないだろうか。










































































