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タミヤのプラモデルから採寸して1/1スケールの「ティレルP34」を製作【自動車変態列伝】

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TEXT: フェルディナント ヤマグチ(FEDINAND Yamaguchi)  PHOTO: 増田貴広(MASUDA Takahiro)

美しいディーノのボディを手元に残すために作ったアルミのオブジェ

ボディ修理の魅力に取り憑かれた綿引さんは、研究を重ね研鑽を積み、どんどん腕を上げていく。「ボディの修理なら綿引さん」と評判が評判を呼び、次々と修理依頼が飛び込んで来るようになった。とくにアルミボディに関しては、日本でも第一人者と呼ばれ、依頼は引きも切らない状態だ。そんなある日、やはり納屋物件のフェラーリ ディーノ246GTSを馴染みのお客さんから譲ってもらうことになった。

綿引「状態はかなり悪かったのですが、時間を見つけてはコツコツと直していきました。最終的にはいい形に仕上がって、しばらくは自分で乗っていたのですが、もともと自分はディーノなんかを乗り回すような身分じゃないという感覚もあってね(笑)。どうしても欲しいというお客さんに売ることになりました。が、待てよと。この美しいボディだけはどうしても残しておきたいと。それじゃ丸々コピーして、同じものを作ってみようと思うに至りました」

「丸々コピー品を作ってしまえ」という発想も凄いが、それを実行してしまう行動力はもっと凄い。なにしろ図面がない。詳細な寸法もわからない。

 

綿引「図面がなくてもホンモノが目の前にありますからね。当て紙を使うんです。例えばフェンダーのアーチを作ろうとしたら、ヘッドランプを中心に2本のラインテープを貼る。その両端に両面テープを少しずつ貼っていって、紙をベタッと置いていくんです。そうやって型を作っちゃう。あとはそれと同じ型に叩いていけば良いんです。元になるのはアルミの板です。普通の板をトントンと叩いていって、丸いアーチを作っていく」

「叩いていけば良いんです」と言われても困惑するばかりだが、ともかくその気の遠くなるような地道な作業を繰り返して、ディーノのボディが完成した。素材は加工性が良く、耐食性に優れた1000番代のアルミだから、外に置いておいてもサビる心配がない。

綿引「このディーノのボディは、作っているのを見ていたお客さんが、“俺にも1台作ってよ”と言うので、そのままお譲りすることにしました。自分の趣味として作っていたわけで、別に売り物のつもりはなかったのですが、結果として制作中に売却先が決まってしまいました(笑)」

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