歴史的建築物が自動車デザインの舞台に
個性と創造性が交差する都市、ベルリン。アートや音楽、そして革新の最前線であり続けるこの街に、ブガッティは次世代の自動車デザインを担う新たな拠点を構えました。世界中の才能が集い、歴史ある建築物の中で未来を形づくる⋯⋯そんな唯一無二のスタジオの全貌を紹介します。
時代を超えて進化する創造空間
ドイツ・ベルリンに新設されたブガッティ・デザイン・スタジオは、自動車の未来を形作るアイデアを生み出す空間であると同時に、世界22カ国から集まったデザイナーにインスピレーションを与え続けてきた伝統の精神を称える場として設計された。長年の時を経てきたシンプルで美しい工業用建築の内部には、1100平方メートルのスタジオが広がっている。
この建物は、歴史的意義を持つ保護区域に位置し、1920年代には都市の地下鉄システムに電力を供給する発電所としてその役割を果たしていた。1990年代にはテクノクラブへと変貌し、時代の移り変わりとともに数々の変化と文化の革新を見届けてきた。
スタジオは壁と床を覆うオリジナルのセラミックタイルや、上階の広大なメインホールへと続くオープンギャラリーに設置された100年以上の歴史を持つ鋳鉄製の階段など、そのすべてが往時の息吹を宿している。これらの設備は、ブガッティの業界を牽引する専門家たちに革新的なコンセプトの具現化を可能にするツールを提供し、自動車デザインの分野に新たな刺激をもたらしている。
没入型スタジオが形づくる未来のクルマ
伝統的なクレイモデリングの芸術を複雑な現代的手法に置き換えることで、ブガッティのデザイナーたちはこの工業空間を没入型のバーチャル・デザイン・スタジオへと変貌させている。スタジオ内に戦略的に配置されたヘッドトラッカーを活用し、デザイナーはバーチャルリアリティ技術を用いて、車両デザインをミリ単位の精度でデジタル空間にレンダリングし、あらゆる側面を高精度かつ効率的に検証・修正・最適化することが可能である。
この卓越したスタジオの美しさは、その柔軟性に満ちた設計に如実に現れている。各作業台、イーゼル、創造的スペースはシームレスに収納可能であり、照明は無段階で調整できる。複雑にタイル張りされた床は拡張され、イベントスペースとしても機能する。
AMWノミカタ
2022年にリマックとブガッティが統合されて「ブガッティ・リマック」という新しいグループが誕生した。これに伴い両ブランドの技術・製品に関するデザインとエンジニアリングに特化したデザイン・エンジニアリングセンターを新たにベルリンに設立することとなった。
また、ブガッティのデザインディレクターであるアキム・アンシャイト氏がベルリン在住であり、このクリエイティブな環境から多くのインスピレーションを得たこともベルリンを拠点にしたひとつの要因だという。
このデザインセンターの特徴は、デザイナーに常に刺激を与え続ける環境を整えたことである。最新のテクノロジーの導入だけでなく、あらゆるデザインのヒントが展示され、共有される。22カ国から集まった文化的背景も異なるデザイナーが同じ屋根の下で、同じものを見て、そしてお互いに刺激を与え合うことでブガッティのデザインフィロソフィーや歴史が共有され、そして進化してゆくのであろう。「卓越した国際的な人材を引き続き惹きつけるため、ブガッティの新デザイン本社は、同じだけの魅力を持つ必要があった」という言葉に深く共感する。