全国から集う東北660シリーズの挑戦者たち

東北660シリーズは、地元の東北や関東だけでなく、東海や関西から遠征して参加するドライバーもたくさんいます。愛知県在住の高橋康平さんも、そのひとりです。以前はマイノリティな三菱「ミニカ」でエントリーしていましたが、車体やエンジンの劣化が目立つように。そこで、東北660で知り合ったオートリサーチ米沢の勧めもあり、思い切ってスズキHA36型「アルト」のAGS（オートギヤシフト）に乗り換えることを決意しました。

マシン乗り換え初年度から好成績

三菱「ミニカ」に比べてエンジンはパワーもトルクもあり、アフターパーツも選び放題という状況のスズキHA36型「アルト」。しかし、一般的なMTに慣れた高橋康平にとってクセのあるAGSには、戸惑うこともあった。サーキット走行は、オートリサーチ米沢のデモカーを筆頭に、先行して走っているエントラントたちのデータがあるため、比較的アジャストするのは楽だったはず。それよりも手こずったのは街乗りだと、高橋は話す。

渋滞での発進が思ったタイミングでできない、MTよりもエンジンブレーキの効きが弱い、CVTのようにおいしい回転域を使えず、高速道路で追い越すときに苦労するなど、慣れるにはもう少し時間がかかりそうだ。ただし、サーキットではすでにトップを狙えるほどの力を身に付けている。

参考までに、昨年の東北660・HA36カップ、スポーツランドSUGOの最終戦を見てみよう。決勝こそリタイヤを喫したものの、予選はトップと約0.2秒差の1分58秒008をマークして2番手という好ポジションをゲット。レースが開催されるサーキットで練習できる機会が圧倒的に少ない遠征組、しかもミニカから乗り換えて日が浅いことを考えれば、上々の成績だろう。

限られた改造範囲で差をつける

高橋の愛車のチューニングを紹介したい。改造できる範囲がもっとも狭いHA36カップだけに、パーツのチョイスやセットアップが非常に重要だ。なかでも中核といえるECUはオートリサーチ米沢のオリジナルで、HA36カップでは初年度から多くのチャンピオンを輩出している。

足まわりもシルクロードの車高調がベースのオートリサーチ米沢オリジナルで、スプリングレートはオーソドックスな前後8kg/mmをチョイスした。ほかは、強化になるとの噂があるスズキ「ワゴンR」エネチャージ用のプラグ、自作のパイピングにパワーハウスD.T.Mのマフラーを装着したくらいだ。

遠征組ならではのクルマ作りはオーディオだ。DVDプレイヤーを備えた2DINのデッキと、カロッツェリアのスピーカーを4発も入れており、柔らかめな足まわりの効果もあって、サーキットまでの往復や通勤はいたって快適とのこと。ただし、重量面でのハンディキャップは十分に承知しており、少しでも差を埋めるため、サーキットでは助手席まで取り外す。

2024年は開幕戦を欠場して最終戦がリタイヤだったため、シリーズランキングは6ポイントの8位と振るわなかったが、マシンにも慣れた2025年はどこまで成績を上げてくるか。2025年6月29日に行われる開幕戦に注目したい。