さまざまな年代のヒストリックカーを楽しんだベテランオーナー
東京・汐留にあるイタリア街で毎年11月23日にCOPPA DI TOKYO(コッパ・デ・東京)が開催されています。レアなクルマと魅力的なコースレイアウトが設定され、毎年参加枠のキャンセル待ちをする人が出るほどの人気のラリーイベントとなっています。今回は、会場で最も注目を浴びていたバンディーニ「サロンチーノ」を紹介します。
ようやく路上復帰へ! 試運転もかねて参加
戦前車から少数生産の希少車までさまざまな車種が集まり自動車博物館のような様相に、それをひと目見ようと観客も含め、早朝より賑わいを見せたCOPPA DI TOKYO(コッパ・デ・東京)。そうしたなか、会場入りした1台のマシン、ミッドシップにレイアウトされたエンジンがスケルトンになったカバーで覆われている美しいスポーツカーが現れた。“バンディーニ サロンチーノ”が入場すると、観客や他エントラントも一斉に注目する。
低い車体から全身が埋もれるようなバケットシートに身を委ねているのは東京都から参加の水嶋啓一さん。
1950年代から1960年代のスポーツカーを楽しむ水嶋さんが、メンテナンスでお世話になっている工場で保管されていたサロンチーノを手に入れたのは5年前。当時の持ち主が別のバンディーニに集中するということで譲り受けた。
「じつは手に入れてから随分時間が経っているんですよ。入手前からミッションの調子が悪くて、こうしたクルマはパーツも簡単にはいかないですから、なかなか、手をつけてもらえないのはご存知ですよね(苦笑)? 入らなかったギヤの調整が、ようやくなんとかなったということで、今回は試運転を兼ねて参加しました」
このコッパディ東京を含め、小海や京都といったコッパディ・ジャポネシリーズや、GoGoラリーといったヒストリックカーラリーに約40年参加しているという水嶋さん。長年の相棒であった1926年製のオースティン セブンと入れ替えで、これからはサロンチーノで楽しみたいと話す。
これまでのバルケッタボディからクーペに変更した最初のモデル
イタリア・ロマーニャの都市フォルリにイラリオ・バンディーニが1946年に設立したバンディーニ。イラリオ・バンディーニ自らもドライバーとしてステアリングを握りつつ、主に小型エンジンを搭載したスポーツカーやレーシングカーや、自製エンジンも製造した。自国イタリアで開催のミッレミリアのみならず、1955年と1957年にはSCCAのクラスチャンピオンを、イラリオ・バンディーニのドライビングで獲得するなどアメリカでも活躍をみせる。
そして、それまでのバルケッタタイプから独創的なスポーツクーペとして1968年のトリノモーターショーで発表されたのが、サロンチーノなのだ。
時代の流れにも沿ったスポーツクーペの外観を与えられただけでなく、搭載されるエンジンは、イラリオが設計した新開発のシャシーの強度を保つ構造材となっている。それらにあわせ、フロントサスペンションもアップデートされた。
「エンジンルームがスケルトンで見えるクルマなんて、他にありませんし。これまでにない流麗なフォルムはバンディーニ ルマンとサロンチーノと呼ばれています。とくにこのデザインは気に入っていますし、エンジンも軽く吹け上がりパワーも申し分ありません」
この日はコンディションの様子見ということで、会場周辺のみの走行に留まった。クルマの持つポテンシャルには十分な手応えを感じているという水嶋さん。1946年から1992年の活動期間での車両生産数は約75台と言われているバンディーニ。当然のことながらサロンチーノも希少なモデルだ。
「いろいろなタイプのスポーツカーを楽しんできましたが、満足度が高いですね。ひとつ挙げるとしたら、乗り降りは大変です」
そう笑う水嶋さん、シフトの問題が解決し干潮を取り戻したサロンチーノの勇姿を楽しみにしている。


























































