HA36型アルトでチャンピオンを狙う
東北660選手権の1シーズンを締めくくる特別戦。ドライバー2名まで登録できる60分のセミ耐久レースは、シリーズポイントとは関係のないお祭り的なイベントゆえ、翌年を見据えたテストとして参加するドライバーも存在します。2024年の特別戦にAGS(オートギヤシフト)のスズキHA36型「アルト」を持ち込み、4クラスで3位に入った佐久間航平もそのひとりです。
トップ快走から悪夢のクラッシュ
以前はダイハツL275型「ミラ」で3クラスにエントリーしていたが、今回がニューマシンとしての実質的なシェイクダウン。佐久間とタッグを組むのは、東北660選手権などで何度も王者に輝き、公式レースでも好成績を残している松山雄大だ。佐久間が所属する「ZtoAuto CSW自動車部」のレクチャー役でもあり、経験豊富な松山にマシンをセットアップしてもらうための参戦だった。
もうひとつの大きな課題は、佐久間の精神的なリハビリだ。2023年の東北660耐久レース最終戦で、佐久間たちはダイハツL880K型「コペン」を投入。2位に約1.5秒という圧倒的な差をつけて総合のポールポジションを獲得する。しかし、スタートを担当した佐久間はトップ走行中に単独クラッシュ。マシンのダメージが大きく、リタイアという結果に終わってしまった。不幸中の幸いかケガはなかったものの、大きなトラウマを背負うことになった。
祖父の愛車がレースマシンに変身
心機一転でレース車両を乗り換え、特別戦と同時開催されたHA36カップにも参加。結果は冒頭で書いたとおり、特別戦は松山の力もあってクラス3位。またHA36カップも度重なる赤旗中断を乗り越えて3位に入賞する。ドライビングもセッティングも、まだ煮詰める余地はあるが、大クラッシュからの復帰戦としては十分すぎる結果だろう。

マシンに関するエピソードもちょっと面白い。なんと、このHA36型アルトは、佐久間の祖父が乗っていたクルマなのだ。それを譲ってもらい、フルノーマルの状態からわずか1週間でレースマシンに製作したという。走行距離は3万6000kmで、ボディのコンディションも上々。ただし、レーダーブレーキサポートや横滑り防止装置など、スポーツ走行ではマイナスになる装備も付いている。それらのキャンセルや作動させない走らせ方が、今後のテーマとなりそうだ。
なお、2025年は東北660耐久レースにもHA36型アルトで復活を果たす。スプリントと耐久という二足の草鞋を履き、目指すは両カテゴリーでのチャンピオンか。















































