今や希少な量販グレード1500C/Cのワンオーナー車
旧車ファンが集う早朝の奥多摩。なかでも第1日曜日は、いすゞ車が多く集まることで知られています。現在ではトラックメーカーとして有名ですが、かつては歴史に名を刻んだ乗用車を数多く輩出してきました。今回は「街の遊撃手」のCMで一気に知名度を上げたいすゞの通称「FFジェミニ」と言われた2代目ジェミニを新車から乗り続けているオーナーを紹介します。
2桁ナンバーが物語る35年間の一途な愛情
会場となった早朝の奥多摩の駐車場には、「117クーペ」や「ベレット」、「ピアッツァ」など、数多くのいすゞ車が集まりました。そんななかで気になる1台を発見。35歳以上の人ならおそらく見たことがあるであろう、「街の遊撃手」というキャッチフレーズでパリの街中を滑るように走り回るCMで一躍有名となったFFジェミニだ。ホイールキャップを含めてオリジナルをしっかりとキープしているだけでなく、2桁のナンバーを掲げている。オーナーの“MZTさん”に話を聞いてみた。
「このクルマは1989年式で、1990年に新車で購入しました。現在ついている『相模54』というナンバーはその時に登録したものです。ずっとこれ1台でやってきましたが、これまで大きなトラブルはなかったですね。2024年にマフラーが折れてしまったので、ステンレスで作り直したくらいかな」
1.5L SOHCを搭載したモデル末期の1500C/C
いすゞ ジェミニは、当時技術提携をしていたGMがプラットフォーム共通化のためにオペル「カデット」をベースに開発したグローバル車両で、1974年にデビューした。その後いすゞ独自開発のこの2代目ジェミニが1985年に登場するものの、しばらくは初代モデルも併売。ニューモデルはFFジェミニの名で販売された。“MZTさん”が乗るのは、3代目ジェミニ登場直前となる1989年式1500C/Cで、この年のセダンモデルはリアのナンバープレートがトランクリッドからバンパーに移動しているのが特徴だ。
当時のジェミニというと、1.5Lターボを搭載し、ドイツのイルムシャーがチューニングを手がけた「イルムシャー」や、DOHC1.6Lを搭載した「ZZハンドリングバイロータス」などのホットモデルが人気を博していたが、“MZTさん”が乗るのはごく一般的な1500C/Cであるところに価値がある。それは普及グレードゆえにオリジナル状態でワンオーナー車というのは非常に珍しいからだ。
今後も乗り続けるためにパーツ収集も欠かさない
ボディは部分的な補修を受けているものの、基本的にはオリジナルペイントをキープしているそうで、各部のステッカーなどもしっかりと残っている。ちなみにC/Cのホイールキャップの意匠はイルムシャーとは異なるため、しっかりと残っているのは珍しいそう。“MZTさん”は1度リペイントしリフレッシュしている。インテリアはずっと純正をキープしていたが、2024年イルムシャーのレカロシートやリアシートを入手したため、現在はこれを利用している。
「新車からずっとこのクルマに乗ってますが、不満はまったくないし、当時もこのあとのモデルに乗り換える気にならなかったんですよね。それ以来このクルマから乗り換えたいと思える魅力的なクルマに出会ってません。だからまだまだこれに乗り続けるつもりです。そのために基本的なパーツはある程度収集してあります」
















































