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230万円で落札!希少なミニ1000Mk-IIが意外なる評価額の理由

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

極寒の北欧で使用されていたが塩害は認められず

1969年1月24日に製造されたこのオースティン ミニ1000は「タータンレッド(Tartan Red)」で塗装されたことは判明しているが、内装の色は記録されていない。

1969年1月27日に工場に出荷されたあと、この個体はブリティッシュ・レイランド(スウェーデン)ABの本社があるゴットランドに送られた。そしてファーストオーナーに引き渡されたあと、このミニ1000はスウェーデンの北極圏付近にて、生涯の大半を過ごしてきたといわれている。

極寒のこの地域では、冬の滑りやすい道路で塩(塩化カルシウム)ではなく砂利を使用する。クルマにとってはより穏やかな融雪方法が採用されていたそうで、フロアパンやボディパネルのチャンネル部など、クラシック・ミニでサビや腐食の起こりやすいとされる箇所に関しても、大きな問題はないと報告されている。

2012年にデンマークで発見されたのち、このミニ1000Mk-IIはすぐに「ザ・ブリティッシュ・アイコンズ・コレクション(The British Icons Collection)」に購入され、2013年に初めて母国イギリスの地を踏む。これまで大規模なレストアを受けた形跡はないものの、現状においてもこのクルマは美しく保たれており、工場指定のタータンレッドのカラーリングと、それにマッチしたフルオリジナルのインテリアを特徴とする。
また、エンジン番号は車両に添付される「ブリティッシュ・モーター・インダストリー・ヘリテージ・トラスト」の証明書に記載された製造記録と一致しているとのことであった。

高騰するBMCの相場が少し沈静傾向なってきた……?

この魅力的なオースティン ミニ1000 Mk-IIについて、RMサザビーズ欧州本社では

「イギリスで製造されたもっとも有名なクルマの稀少な欧州大陸仕様の1台であり、世界中のコレクターから注目を集めることでしょう」

と高らかにアピールするいっぽうで、1万ポンド~1万5000ポンド(邦貨換算約203万円〜304万円)という、ここ数年の国際クラシックカーマーケットにおけるBMCミニ1000MK-IIの相場から比較すると、いささか控えめにも思われるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして7月8日にクリブデンハウスで行われた競売では、エスティメートの範囲内に収まる1万1500英ポンド、現在のレートで日本円に換算すると約230万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

ひと頃は、1000万円超えの売買事例も多く見られたBMCミニながら、そこまでの高価格で取り引きされるのはMk-IのクーパーSなど、特別な付加価値のあるモデルに限定されていたと記憶している。

とはいえ、MK-II時代の1000スタンダードとて300万円オーバーが多くを占めていたことを思えば、いわゆる「クラシック・ミニ」の市場相場も、少し落ち着いたと見るべきなのかもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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