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デ・トマソの幻!1台生産され1度だけ参戦した貴重な「5000スパイダー」がモントレーオークションでまさかの低額で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's/Bonhams

タイムカプセルから出てきたように当時のコンディションを維持

まるでタイムカプセル内に封印されたまま、年を重ねたかのようなデ・トマソ・スポルト5000スパイダーだが、当時のイタリア式スポーツプロトタイプのデザインと、「もしシェルビーがプロジェクトに残っていたら、どうなっていたか…?」という可能性を垣間見せる、この上なく興味深い存在であることは間違いないだろう。

とくに、参戦した当時を感じさせるオリジナリティが極めて高いエクステリアとコックピットのコンディションは、同じオークションに出品されたデ・トマソ旧工場からサルベージ後に完全修復された姉妹車、デ・トマソP70と対照的だった。

それでも、たった1戦のみとはいえFIA公式戦に正式エントリー歴のある、この特別なデ・トマソは、「FIAペーパー(認証書類)」を取得することが可能なメカニカルコンディションも維持しており、たとえば「モントレー・ヒストリックス(Monterey Historics)」、「グッドウッド・リバイバル(Goodwood Revival)」、「シルバーストーン・クラシック(Silverstone Classic)」など、数多くのヒストリカルイベントへのエントリー権も得やすい。さらに、国内外を問わず「コッパーステート1000(Copperstate 1000)」のようなカーショーや、興奮に満ちたツアーイベント、ラリーへの参加も可能と謳われた。

今回の「Monterey 2025」オークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社は公式カタログ内で歴史的価値をアピールする一方、ロットナンバー148で出品されたP70の予想落札価格75万ドル〜100万ドル(邦貨換算約1億1070万円〜1億4760万円)に対して、ロットナンバー152で出品されたこのスポルト5000スパイダーは50万ドルから65万ドル(邦貨換算約7350万円〜9555万円)というエスティメートを設定した。

そして迎えた8月16日のオークション当日。モントレー市内の大型コンベンションセンター、および今年から隣接するホテルにも会場を広げて挙行された対面型競売では、ビッド(入札)がいまひとつ伸び悩んだようで、入札締め切りに至ってもエスティメート下限に届かない44万5000ドル。つまり現在の為替レートで日本円に換算すると約6540万円で、壇上に立つ競売人のハンマーが鳴らされた。

ちなみに同日の「Monterey 2025」オークションに出品された姉妹車、デ・トマソP70は72万ドル(約1億700万円)というはるかに高額で落札されている。やはりP70は近年レストアされた美しいコンディションであること以上に、ピート・ブロックらしい先鋭的で流麗なボディがよりピュアに表現されていることなど、クルマとしての魅力の差も影響しているように感じられる。

おそらく、2003年以降の歴代オーナーと同じく、同一人物が2台とも落札したのでは……と推測されるものの、今のところ実情は不明だ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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