トランプ関税の影響か?記録的な下落をしたオークション価格
製作したメーカーの所在や来歴が明らかでなく、作られた数もごく少数と思われるF-Racer Juniorだが、RMサザビーズの「Monterey」オークションに登場するのは今回が初めてではない。
3年前の2022年のオークションには、プロトタイプといわれているシャシーNo.01が出品され、3万ドルから4万ドルというエスティメート(推定落札価格)に対し、11万4000USドル(現在の邦貨換算約1672万円)という高価格で落札された。翌年の2023年にも出品され、同じく3万ドルから4万ドルのエスティメートが設定されたが、落札価格は8万7000ドル(現在の邦貨換算約1276万円)に終わった。とはいえ、これまでの落札価格はいずれもエスティメートを大幅に上まわってきた歴史がある。
F-Racer Juniorとしては2年ぶりとなる今回のオークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社の営業部門は
「印象的なブラックのボディカラーに黒いインテリアの組み合わせで生産された、わずか10台のうちの1台」
というPRフレーズとともに、実績からすれば安価に思われる3万ドルから5万ドル(邦貨換算約444万円〜740万円)というエスティメートを設定した。そのうえで現オーナーとの協議の結果「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
この「リザーヴなし」という競売形態は、価格の多寡を問わず落札できるため、会場の雰囲気が盛り上がり入札が跳ね上がる傾向がある。しかしその反面、たとえ価格が出品者側の希望に到達しなかったとしても、強制的に落札されてしまうというリスクも同時に内包している。
そして迎えた8月15日の競売では、最低落札価格なしのリスクが発動したようだ。落札価格はエスティメート下限を大幅に下まわる2万4000ドル(現在のレートで日本円に換算すれば約352万円)となった。これはこれまでの落札履歴からすると大幅な下落である。
もちろん、公道走行が許されないジュニアカーに352万円オーバーは十分に高価であることは間違いない。しかし、2022年および2023年の落札履歴からすれば、今回のハンマープライスは驚きに値するほどに下落しているのも疑う余地のない事実である。
たしかにカタログ写真をよく見ると、ボディパネルの表面にFRPの劣化によると推測される凹凸や、室内でもジャージー風生地の毛羽立ちのようなものが確認できるなど、コンディションが極上とは言い難いことが、この価格に影響したと推測される。
そのうえ、「トランプ関税」による全世界的な景気の先行き不安感により、移ろいやすいこの種のマーケットの展望が見えにくくなっていることも、この落札価格を左右したことが想像できる。趣味・嗜好品を扱う国際的なマーケットでは、たとえ子どもの玩具の延長線上にあるようなジュニアカーであっても世界情勢の影響を受ける。今回のハンマープライスは、そのような図式を明示しているかにも感じられた。





































































