リアウイングにはF1由来のDRSシステムを採用
フェラーリが開発した「599XX EVO」は、公道も走れないレースも参加できない“究極の実験車”です。市販車599GTBをベースにしながらも、ほとんどの部分が専用設計。最新の空力技術やV12エンジンを試すために作られた特別なモデルです。車両のあらましとオークション結果についてお伝えします。
ベースの599XXは究極の空力パーツと先進メカニズムを採用
フェラーリが2009年のジュネーブ・ショーで発表した「599XX」は、当時の12気筒2シーター「599GTBフィオラノ」をベースに開発されたFXXに続く、XXシリーズの第2弾となるモデルである。
599XXが599GTBフィオラノと共通しているのは、FRという基本設計とそれを包み込むボディのシルエット程度だ。フェラーリは最初から599XXの高性能車の未来をテストし、進化させ、そして最終的に技術的な影響を与えるための、一切の規制を持たない実験車として開発していた。
したがって599XXは、FXXと同様に公道での走行はもちろんのことレース参戦も不可能な、いわゆるサーキット走行専用車である。カスタマーには「XXプログラム」と呼ばれる最上のサポート体制とホスピタリティを誇る、特権的なドライビング・プログラムが提供された。
599XXで採用されたエンジニアリングは、もちろん当時の最先端にあるものだった。ボディのディテールはより優秀なエアロダイナミクスを得るために徹底して見直された。
フロントでは大型化されたエアインテークを持つバンパースポイラーや、新たにエアアウトレットが備わるようになったボンネットなどが独自のデザインとなっている。一方リアセクションに目を向ければ、Cピラーにカナードが組み合わされたほか、バンパースポイラーやディフューザーも一新された。599GTBフィオラノではテールランプが備わっていたスペースを、ディフューザーとともにアンダーボディを通過してきたエアを排出するための、もうひとつのアウトレットとして活用しているなど、その変化は激しい。
「アクティブフロー」と呼ばれる、ロールやピッチといったファクターにも対応し、常に最適量のダウンフォースを得るアンダーボディのシステムや、ボディ後方のスワール（空気の渦）によって生まれる抵抗を軽減するための「シンセティックジェット」などの新機構も話題だった。
まさに究極の空力マシンへと進化を遂げた599XXだが、そのメカニズムもまたきわめて先進的である。アルミニウム製のスペースフレームはカーボンファイバー製のパーツによってさらに補強された。フロントに搭載される6Lの排気量を持つV型12気筒エンジンは730psにまで強化されている（発表時には700psとアナウンスされていた）。ミッションはシングルクラッチ式の6速セミATだ。最短で0.06秒でのシフトチェンジが可能であった。
