チューニングで性能を高められたF40の評価
ブルーチップのベースとなったのは、1992年7月29日にマラネロの本社工場から出荷された「94647」シャシーナンバーを持つイタリア仕様のF40だ。最初のオーナーはボローニャで興業師を営んでいたパオロ・パッツァーリアと呼ばれる人物で、彼は1993年の半ば頃まで約5000kmを走行した。その後、「94647」は複数のイタリア人オーナーの手を経て、1998年にイギリスへと輸出された。
このF40のパフォーマンスと個性をさらに高めようという大胆な発想が生まれたのは、2021年のことだった。この作業を委託されたのはイギリスのスーパーカースペシャリストとして知られるフルロンガー・スペシャリスト・カーズ社である。
彼らはF40LMに使用されたミケロットの開発によるレーシングギアボックスや、より高い過給圧を可能とするための強化型ターボ・ウエイストゲート、Tubi製のエグゾーストシステム、リフトキット付きのKW製アジャスタブルサスペンション、355mm径のブレンボ製ブレーキ、18インチ径ホイールなどを新たに装備した。
その一方で新車時にはロッソ・コルサだったボディカラーも、斬新なアズーロ・ハイペリオンへと塗り替えられた。このカラーはF40が本来持つシャープで機能的なラインをさらに際立たせることに大きく貢献している。オドメーターには現在までの走行距離となる3万1891kmが刻まれている。
今回、ある重要なプライベートコレクションから出品されることになった「94647」、すなわち「ブルーチップ」には、オリジナルの保証書とサービスマニュアル、取扱説明書、走行距離の累積が確認できるイギリスのV5とMOTのドキュメント、そして20年以上を遡ることが可能なサービス請求書も付属していた。
はたしてF40のファンは、この「ブルーチップ」にどのような評価を下したのだろうか。250万ドルから280万ドル(邦貨換算約3億6795万円から4億1210万円)という予想落札価格がRMサザビーズから提示される中でオークションは始まった。
やはり、前日にもう一方の1990年式F40が385万5500ドル(邦貨換算約5億6745万円)で落札されたことが強く意識されたようだが、結果的に入札は275万5000ドル(邦貨換算約4億548万円)という数字で止まることになった。この結果は、クラシック・フェラーリのファンには、ヒストリーや走行距離とともにオリジナル絶対主義の哲学が存在することを示唆している。


























































































