マツダより早く量産したロータリーエンジン車が展示されていた
こうした今日の発展を見ると、いかにも当時の展示は貧弱に思えてしまうが、それでも重要と思われた展示をいくつか紹介しよう。
最初に紹介したいのは、ポルシェ「908」である。908seriesのなかではもっとも多く作られたシャシーで、プロトタイプを含み31台が作られた。ボディはここに展示されていたショートのほかに、ロングテールバーションがある。ロングテールは2台しか現存しないと言われている。
同じレーシングカー繋がりで撮影したモデルは、1987年のル・マンなどに出場したザウバー「C9」で、KORUSカラーに塗られたモデルである。ル・マンでは日本の岡田秀樹もこのクルマに乗った。
世界初のロータリーエンジン搭載の量産モデルであるNSU「スパイダー』もある。498ccのシングルローターエンジンを搭載し、出力50psを得ていた。1963年から1967年まで生産され、最終型では54psに性能向上していたという。3年間の販売台数は2372台であった。このクルマの販売が終了する1967年に、わが国のマツダ「コスモスポーツ」が市場に送り出されている。
ドイツではポピュラーであった、1949年から1956年まで生産されたテンポ「ハンゼアット」。400ccの2サイクルエンジンを搭載し、最高出力14psであった。
ソ連の航空機ツポレフを入手できるくらいだから、珍しいソ連製のクルマもあった。GAZ13チャイカと呼ばれるこのクルマは、1958年にデビューして、当時のソ連要人に使われたモデルだが、随所にアメリカンの雰囲気を醸し出している。エンジンは5.5LのV8である。プッシュボタン式のトランスミッションセレクターは当時のクライスラー風であり、ボディデザインは、とくにフロントに関してはパッカードによく似ていた。
バイエルンのディンゴルフィングに居を構えていたグラースが作り上げたマイクロカーブランド、「ゴッゴモビル」のクーペもある。同じプラットフォームからセダンとクーペ、それにバンを生産していた。展示されているのはクーペである。初期モデルは後ろヒンジのドアを持っていたが、これは後期型のモデルである。排気量は250cc、300cc、400ccをラインナップするが、写真のモデルの排気量は不明である。
航空機やUボートまであるジンスハイム博物館。筆者はまた行ってみたいと思っている。
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