車齢約35年で走行距離は3万km未満という奇跡のSZ
2025年11月8日にアイコニックオークショネアーズが主催した「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」にアルファ ロメオ「SZ」が出品されました。伝統あるSZ(スプリント・ザガード)の名を受け継ぎながら、誰もが2度見するほど個性的な姿で登場したそのモデルは、今なお強烈な存在感を放ち続けています。車両のあらましとオークション結果についてお伝えします。
ザガートの原案をフィアットが昇華させた「イル・モストロ(怪物)」デザイン
1989年のジュネーブ・ショーで、アルファ ロメオが発表したFRスポーツカーのSZ。ちなみにSZとは「スプリント・ザガート」を意味する称号である。アルファ ロメオにとって、これは1960年代に誕生した「ジュリエッタSZ」以来のリバイバルとなる。古くからのアルファ ロメオを知るファンにとって、この伝統の称号が復活したことは大きな話題となったが、それ以上にSZを見た者を驚かせたのは、その斬新で個性的な造形を持つボディデザインにほかならなかった。
このデザインは、カロッツェリア・ザガート、アルファロメオ、そしてフィアットのコラボレーションによって生み出されたものとされる。実際には、ザガートの描いた原案を参考に、当時フィアットのチェントロ・スティーレ(スタイリング・センター)に在職していたロベルト・オプロンがエクステリアの基本デザインを担当した。その最終的な仕上げとインテリアは、同じくフィアットのアントニオ・カステラナによってデザインされている。
ザガートがこのプロジェクト(当初は3Lのエクスペリメンタル、すなわち実験・スポーツカーを意味する「ES30」の開発コードが掲げられていた)に関係していたことを示すのは、わずかにフロントフェンダーに付くエンブレム程度だが、その組み立て(アッセンブリー)はザガートの工場で行われた。
ベースとなったフロアパンは、4ドアサルーン「75」と共通する。これにFRP製の2ドアクーペボディを組み合わせており(ルーフのみは強度確保のためにアルミニウム製)、これがSZの基本的な構造である。
6灯式の角型ヘッドランプを採用したフロントマスクは、硬派なスポーツカーらしい戦闘的な雰囲気と、見方によっては不気味ささえも感じさせる。このようなエクステリアのフィニッシュから、開発の現場ではSZに「イル・モストロ」(怪物)というニックネームさえ与えられることになった。見た目のインパクトだけではなく、SZのボディは空力的にも非常に高性能なものだった。発表当時のデータによれば、空気抵抗係数(Cd値)は0.30だ。これは、フィアットの風洞実験装置で数多くの設計改良を重ねた結果である。
































































































































































































