ブルネイ王室のコレクションに加わるはずだった数奇な1台
RMサザビーズ「LONDON 2025」オークションに出品された個体は、1988年製造の「88 1/2」イヤーモデルだ。右ハンドル仕様で生産されたわずか17台のうち最後の1台である。
1988年8月3日、サンタ・アガータ・ボロニェーゼ工場から出荷された個体は、英国の正規代理店「ポートマン・ランボルギーニ・ロンドン」を介して新車として納車された。ボディカラー「ブル・アカプルコ(Blu Acapulco)」のシャシーNo.12420は、ランボルギーニ本社の登録簿によれば同カラーで製作された右ハンドル仕様車2台のうちの1台だ。
シックなボディカラーは「パンナ・コン・フィレッティ・ブルー(Panna Con Filetti Blue)」のレザー内装とマッチし、当時のF1マシンからインスパイアされたリヤウィングとゴールドバッジの装着も相まって、ゴージャスなルックスを演出している。
同年8月中に英国内で登録されたカウンタックは、当初ブルネイ王室の代理店として活動していた「トランスカーUK」社が管理した。その後は、当時王室と関係の深かったイタリア・トリノ近郊の「ピニンファリーナ」工房に保管されていた。ただし、シャーシNo.12420に新たなボディを架装する計画があったかどうかは不明である。
ブルネイ王室がピニンファリーナとの長年にわたるスペシャルカー製作プロジェクトを終了させたのと時を同じくして、2000年に「カーズ・インターナショナル・アソシエイツ」社がこの5000QVを買い取った。時点での走行距離は、約2000kmに過ぎなかったと伝えられる。
その後も英国に留まり、2023年4月に現オーナーが入手した。オークション公式カタログ作成時点の走行距離は9058kmを示しているが、数値は走行距離計が「8327km」と記録された2006年まで遡る英国「MoT車検」履歴によっても裏づけられている。
RMサザビーズの公式カタログでは「興味深いヒストリーを有するシャーシNo.12420は、走行中も展示中も、必ずや観る者の注目を集め、その視線を釘付けにするでしょう」と謳う。いっぽうで、55万~65万ポンド(邦貨換算約1億1000万円〜1億3000万円)という自信をうかがわせるエスティメート(推定落札価格)を設定した。
そして迎えた11月1日の競売では入札が順当に伸び、最終的に62万3750英ポンドで落札。現在のレートで日本円に換算すれば、約1億2900万円という高価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされたのだ。


































































