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スズキが世界販売で躍進するインド市場進出44年と二輪事業の相乗効果【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • スズキ e VITARA:インドで展開される新型電動SUVだ。同国の電動化を牽引する
  • スズキ GSX-S1000GX:二輪事業を牽引する大型バイクだ。鮮やかなブルーが美しい
  • カルコダ工場の全景だ。同国における圧倒的な生産能力を支える拠点だ
  • スズキ 二輪事業:現地法人の20周年式典だ。同国での長い歴史と実績を物語っている
  • バイオガス プラントの除幕式だ。環境負荷の低減を強力に推進している
  • BURGMAN STREET:インド市場で絶大な人気を誇る新型スクーターだ
  • スズキ フロンクス:インドで人気のクーペSUVだ。流麗なデザインで若年層の心を掴む
  • アワード受賞式の様子。同国における確かな実績と高い評価を証明した
  • 生産累計1000万台を達成した式典だ。この実績が四輪の躍進を支える
  • SMILE開所式の様子だ。同国での地域社会への貢献を果たしている
  • スズキ:インドのカーオブザイヤー受賞式の様子。同国での高い評価を証明している

インド市場での絶対的なシェアと二輪からのステップアップが世界で存在感を増す「スズキ」躍進の鍵!

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語ってくれるのが「Key’s note」です。今回のお題は、2025年の世界自動車販売台数におけるスズキの躍進についてです。ホンダと肩を並べる勢いを見せるスズキの強さの源泉はどこにあるのでしょうか。インド市場での44年にわたる歩みと、二輪事業との相乗効果から、その独自の戦略を紐解きます。

大手が「インド進出は時期尚早」と敬遠したインド市場への「早すぎた賭け」がもたらし圧倒的シェア

2025年の世界自動車販売台数で、スズキの躍進が話題になっています。トヨタは圧倒的トップですが、ホンダに肩を並べる勢いだというのです。肌感覚でスズキが“きている”のはわかるのですが、それにしてもその躍進ぶりは驚きです。

自動車産業はしばしば規模の論理で語られます。巨大資本、グローバル展開、電動化への巨額投資。しかしスズキの歩みは、その王道から微妙に外れています。いや、外れているというよりも、意図的に“別の道”を選び続けてきたと言ったほうが正確でしょう。その選択が、結果として今回の順位に結実しました。

原動力は言うまでもなくインド市場です。スズキが同国に進出したのは44年前です。まだインフラも整わず、購買力も限られていた時代に、スズキは「マルチ ウドヨグ」と合弁会社という形で現地に根を下ろしました。

当時としては大胆というより、むしろ無謀とすら映ったかもしれません。しかし、その“早すぎた賭け”が、いまや圧倒的な果実をもたらしています。

現地ではスズキは単なる輸入ブランドではありません。生活の一部であり、ある種の社会的記号です。かつてはシェア6割を超え、現在でも4割前後を維持しています。

そして今、その時間の積み重ねに強烈な追い風が吹き込んでいます。インドは2026年、名目GDPで日本を抜き、世界4位に躍進すると予測されています。経済規模の拡大は、そのまま中間層の肥大化を意味します。とくに注目すべきは、年収50万ルピー以上の世帯数が急増している点です。2030年には2億世帯に達するという見通しもあり、自動車市場としてはまさに“臨界点”に差し掛かっています。

ここで重要なのは「誰がその最初の需要を刈り取るのか」という問いです。高級車メーカーが狙うのは、その先にある富裕層です。しかし市場の裾野を形成するのは、あくまで初めてクルマを購入する層であり、その入口に立っているのがスズキなのです。

スズキを脅かすインドでのSUV人気の高まりと競合台頭を跳ね返す「全長4m以下優遇税制」の追い風

風景は変わりつつあります。近年のインド市場ではSUV人気が急速に拡大しています。道路事情の改善やライフスタイルの変化に伴い、「より大きく、より多用途なクルマ」が選ばれる傾向が強まっているのです。小型車を主戦場としてきたスズキにとって、これは明確な構造変化であり、決して看過できるものではありません。

競合も黙ってはいません。「タタ モーターズ」は国産メーカーとしての強みを背景に商品ラインアップを拡充し、現代自動車はデザインと装備で若年層を取り込み、「マヒンドラ&マヒンドラ」はSUV市場で存在感を高めています。

市場の拡大は同時に競争の激化を意味し、スズキのシェアが徐々に削られていく可能性も現実味を帯びています。

しかし、それでもなおスズキが“しぶとい”と評される理由は、別のところにあります。ひとつは税制です。インド政府は全長4メートル以下の小型車に対して税制上の優遇措置を設けており、このルールはスズキの得意分野と見事に一致します。市場の嗜好がSUVへと傾こうとも、制度が小型車を後押しする限り、同社の基盤は簡単には揺るぎません。

バイクからクルマへ! 顧客人生の成長に寄り添うスズキの独自の「ブランド的連続性」戦略でシェア確保

さらに見逃せないのが、二輪事業の存在です。スズキは単なる自動車メーカーではなく、バイクメーカーでもあります。この事実が、インドのような新興市場においては決定的な意味を持ちます。

所得が上がるにつれ、人々はバイクからクルマへとステップアップします。その過程で、すでに馴染みのあるブランドを選ぶ心理はきわめて自然です。言い換えれば、スズキは顧客の人生の“序章”から関与しているのです。

このブランド的連続性は、単なる囲い込み以上の効果を持ちます。顧客は製品を買うのではなく、経験を積み重ねていきます。そしてその経験が肯定的である限り、次の選択もまた同じブランドに収斂していくのです。マーケティング用語で言えばロイヤルティですが、スズキの場合、それはもっと素朴で、生活に根ざした信頼に近いと言えます。

このところのスズキ躍進は、決して偶然ではありません。それは44年前に蒔かれた種が時間をかけて芽吹き、いまようやく大きな実を結んだに過ぎないのです。自動車業界が次の転換期に向かうなかで、スズキがどのような選択をするのでしょうか。その答えは、おそらくこれまでと同じでしょう。つまり、誰も見ていない場所に、静かに次の種を蒔くことです。

ちなみにスズキはいま、アフリカ市場に種を撒き始めています。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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