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古いクルマを大切に乗ると罰金? 自動車税の「13年ルール」が抱える矛盾と持続可能性への疑問

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)

  • メルセデス・ベンツ SL:木下氏の愛車であるR230型SL。5.0リッターの重税対象車
  • メルセデス・ベンツ SL:長く大切に乗られ美しい状態を保つリアビュー。買い替えの原資にはならない
  • サステナブルとは、本来“買い替え続けること”ではない。良いものを、長く、大切に使うことのはずだ
  • 血圧が上がらない税制度になることを願うばかりだ
  • メルセデス・ベンツ SL:製造時のCO2排出を考えれば、長く乗り続けることこそエコといえるはずだ
  • 自動車税 納付書:初度登録から13年が経過したクルマは税額が約15%増税される仕組みだ

木下隆之がモノ申す! 自動車税「13年超で増税」の矛盾

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になるキーワードから徒然なるままに語る連載コラム「Key’s note」。今回のお題は、毎年春になると旧車オーナーの頭を悩ませる「自動車税」についてです。古いクルマに長く乗り続けると税金が高くなるという、いわゆる「13年超の増税」ルールの矛盾と、真のサステナブルについて語ります。

新車は工場を出た瞬間から「環境負債」を抱えている

春になると、花粉とともにやってくるものがある。そう、自動車税の納付書だ。封筒を開けた瞬間、「ああ、今年も国に“愛車への愛”を試されているな」と感じる人も多いだろう。

なかでも旧車オーナーにとって理不尽なのが、「13年超で増税」という制度である。長く乗れば乗るほど税金が高くなる。まるで「まだ乗ってるの?」と国から肩を叩かれているようなものだ。何を隠そう、僕も旧車オーナーである。しかも、排気量は5リッター。バリバリの重税対象車なのだ。

この制度の背景はこうだ。古いクルマは燃費性能や排出ガス性能で現代車に劣るケースが多く、環境負荷低減のために新しいクルマへ乗り換えを促したい。それが理屈である。

だが、果たしてそれは本当に“環境のため”なのだろうか。

まず忘れてはならないのは、クルマは「作る時」に莫大なCO2を排出するという事実だ。鉄を精錬し、アルミを加工し、樹脂を成形し、半導体を製造し、世界中から部品を運ぶ。近年の電動車はバッテリー製造の負荷も大きい。つまり、新車は工場を出た瞬間から、かなりの“環境負債”を抱えているのである。

一方で、既存のクルマを長く使うことは、製造時の環境負荷を償却し続ける行為でもある。欧州では近年、「ライフサイクル全体」で環境負荷を考える流れが強まっているが、日本の自動車税制はいまだに“年式”を主軸にしている。極端な話、年間1000kmしか走らない旧車より、毎日長距離を走る大型SUVのほうが、実際の環境負荷は大きい可能性もある。

それでも前者は「古いから増税」、後者は「新しいから優遇」。この単純化には、そろそろ限界がある。

クルマの買い替えは生活防衛の観点からも厳しい時代へ

経済面でも問題は深刻だ。現在の日本では、新車価格が急激に上昇している。軽自動車ですら200万円を超え、人気ミニバンやSUVは500万円級が当たり前。少しオプションを付ければ、「家よりスマホのほうが高性能」と笑っていた時代から、「冷蔵庫よりクルマのローンが怖い」時代へと突入してしまった。

そんななかで、“古いクルマに乗り続ける”という選択は、単なる趣味ではなく生活防衛でもある。本来なら、丁寧にメンテナンスし、モノを長く使う行為は社会的に評価されるべきだ。ところが現実には、「まだ使えるクルマ」に対し追加課税がおこなわれる。これは消費を促進する政策としては理解できても、持続可能性とは少し矛盾している。

しかも旧車ユーザーは、すでに相応のコストを負担している。部品価格は高騰し、修理できる工場も減少。燃料代も保険料も上がる一方だ。そこへさらに増税が重なるのである。

好きで古いクルマに乗っている人はまだ耐える。問題は、“買い替えたくても買えない人”まで同じ扱いになることだ。実際に僕も同様で、製造から23年も経っている排気量5.0リッターの愛車は、売ろうとしても二束三文だ。だから買い替えもままならない。乗り換えの原資にならないのである。

地方では、クルマは贅沢品ではない。生活インフラである。公共交通が乏しい地域では、通勤も買い物も病院もクルマ頼みだ。そうした人々に対し、「古いから税金を上げます」は、実質的な生活コスト増となる。

単なる消費ではなく「長く大切に使うこと」が真のサステナブル

もちろん、環境性能を改善する方向性自体は必要だが、本当に目指すべきは、“年式だけで区切る税制”ではなく、“実態に応じた公平な制度”ではないだろうか。

たとえば年間走行距離や実際の排出量、あるいは整備状態を含めた評価。低走行のヒストリックカーは文化資産として扱う。あるいは、長期保有による資源節約を税制上で評価する仕組みも考えられる。

20年以上前のセダンに乗る父親。祖父から受け継いだスポーツカーを磨き続ける若者。古い軽トラで畑へ向かう農家。そうした“使い続ける文化”まで否定してしまえば、日本は単に「消費だけが正義」の社会になる。

サステナブルとは、本来“買い替え続けること”ではない。良いものを、長く、大切に使うことのはずだ。

自動車税の封筒を見るたび、愛車に対する国の視線が「まだ乗るの?」ではなく、「ここまで大切に乗ってくれてありがとう」に変わる日が来てほしいと思う。せめて旧車オーナーが、税金の額を見るたびにアクセルではなく血圧を踏み込むような制度だけは、そろそろ卒業したいものだ。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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