歴戦のドライバーが選んだ究極の休日! 愛妻ナビゲートで駆け抜ける長野の山岳ラリー
2026年で35回目の開催を迎えた長野県小海町で開催される「コッパディ小海(イタリア語で「小海杯」)は、周囲に広がる雄大な山岳コースの魅力もあり、人気の高いクラシックカーラリーだ。参加車の多くは1950〜60年代のスポーツカーが大半だが、戦前に造られた貴重なモデルも姿を見せる。その中でも一際目を引いたのが、戦前に製作された純白のイギリス製ライレー「9スペシャル」と、この名車で参加した冨田昭夫さんと美貴子さんご夫妻だ。富田夫妻と今年で96歳になるライレーとの心温まるカーライフを紹介したい。
レース用の特注ボディをまとった戦前の名車にひと目惚れ
1.1リッターのパワートレインを持ち、4ドアセダンからオープン2シーターまで多数のボディスタイルを展開し、競技でも大活躍するなどライレー社でもっとも成功した代表作がライレー 9である。その車体をベースに、レース用の特注ボディをまとっているのがライレー 9スペシャルだ。
愛知県から参加の冨田昭夫さんと美貴子さんご夫妻の愛車である。これまではアルファロメオ ジュリアでクラシックカーイベントを楽しんでいたこともあり、同じイタリアの「虫系(愛嬌のある小排気量車を指す通称)」と呼ばれるフィアットをベースにしたスポーツカーを探していた。しかし、なかなか見つからずにいたところ、所属しているクラシックカークラブの仲間から紹介されたのが、このライレー 9スペシャルだった。

「ボートテール(船の尾部のように先細りになったリアデザイン)にワイヤースポークホイール、そしてレーシングスクリーン(競技用の小型風防)というのが自分の好みにぴったりだったということで決めました」
鈴鹿サーキットの耐久レースでクラス優勝を果たした過去
こうした自動車イベントにはいつも夫婦で参加しているというが、話を伺うと、じつは昭夫さんは本格的なモータースポーツを経験してきたレーシングアスリートだった。
「最初のモータースポーツは、ダートトライアル(未舗装路でのタイムアタック競技)でした。仲間たちとマシンを仕上げて、手弁当で大会に出ていたんですよ」
その後、同じレーシングガレージのドライバー仲間とともに、鈴鹿サーキットでの真夏の耐久レース「ポッカ1000km(2018年よりSUZUKA 10Hへと名称変更)」に参戦する。1人乗りのRS車両(競技専用に開発されたレーシングカー)を駆り、1993年には見事にクラス優勝を果たすほどの腕前の持ち主なのだ。
15年のブランクを経て夫婦で楽しむ新たなモータースポーツ
自動車競技を謳歌していた昭夫さんであったが、野球少年だった息子さんの成長とともに、週末は野球のサポートをすることが何よりの楽しみとなり、モータースポーツ活動は休止することになった。
やがて息子さんも親元を離れたときに、「やはり自分にはクルマしかないな」と思い至る。しかし、15年のブランクを考えると、本格的なモータースポーツへの復帰というのは決して甘くない世界なのは分かっていた。それでもクルマで楽しみたいと考え、考えた挙句に手に入れたのがアルファ ロメオ ジュリアだった。そして、クラシックカーラリーに初挑戦したのが8年前のことである。
「速く走ってタイムを競うレースのほうが性には合っていますが、今はこうしていつも隣でコマ図(ルートの略図)を見てくれて、PC競技(決められた区間を設定タイムで正確に走行する競技)でも指示をしてくれる妻に感謝しています。夫婦一緒にクルマ遊びができるなんて本当に幸せですよ。PC競技もコンマ(小数点以下の秒数)を競う世界なので、一緒に上を目指します」
子供が親元を離れたことで出来た昭夫さんの空白の時間を埋めてくれたのが、クラシックカーだった。だが、クラシックカーゆえに得意だったレースからも離れたことで得られたのは、新たな夫婦の絆だ。夫唱婦随のときも、逆に婦唱夫随のときも、まもなく生誕100年を迎えるライレー9スペシャルはコクピットでの夫婦のやり取りをそのおおらかさで温かく見守ってくれることだろう。









































