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月給1万円時代の50年前に夢見た真っ赤なトライアンフ「TR4A」で、新潟の地を駆け抜ける

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循(NAGAO Jun)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

半世紀を超えて奇跡の出会い! 憧れの英国名車「TR4A」を手にする

新潟県三条市を流れる信濃川の河川敷に、四半世紀以上の時を経た名車たちがずらりと並ぶ。2021年に「古き良き5ナンバーミーティング」として産声を上げ、現在では「20世紀ミーティング」として定着した恒例のヒストリックカーイベントが、2026年4月12日(日)に開催された。2000年までに生産された車両ならなんでも参加可能というおおらかな会場で、ひときわ熱い視線を集めていた1台の英国製オープンスポーツと、半世紀越しの夢を叶えたオーナーのドラマを紐解いていく。

2輪と4輪が入り乱れる大らかな祭典! 新潟を沸かせる20世紀ミーティング

このイベントはその名が示すとおり、2000年までに生産されたクルマとバイクならメーカーを問わずエントリー可能だ。エントラントは信濃川沿いの広大な会場である「ミズベリング三条」に集い、日がな1日のんびりとクルマ談義をして親睦を深めるというおおらかなコンセプトを持っている。そのため毎回バラエティに富んだ車種と、愛すべきクルマ好きが集まるのが最大の魅力である。

2026年春季の今回も、2輪と4輪あわせて154台のエントラントがリストに名を連ねた。参加車両はヤングタイマー(初度登録から15〜30年ほど経過したモデル)と呼ばれる近年のモデルの比率が高い。昭和世代にとって2000年といえばつい最近のようにも思えるが、その頃に生まれたクルマもすでに四半世紀以上の時を経ているのだ。

そんな熱気あふれる会場のなかで、ひと際輝きを放っていた1台が、赤いボディカラーが眩しい英国車のトライアンフ「TR4A」である。

憧れの的だったアメリカの恋人! 流麗なデザインで魅了する英国製スポーツ

第二次世界大戦後の北米マーケットでは、MGやジャガーに代表される英国製スポーツカーが絶大な人気を獲得し、戦争で疲弊したイギリスに貴重な外貨をもたらしていた。その巨大なマーケットを狙ってトライアンフが投入したのが「TR」シリーズである。

TRとはトライアンフ ロードスターの頭文字であり、その名のとおり純粋なオープンスポーツカーのシリーズだ。かつてはMGとともに英国を代表するスポーツカーとして広く知られ、北米大陸で高い人気を博したことから「アメリカの恋人」などと呼ばれることもあった名車である。

そのなかでも1961年に登場したトライアンフ TR4(のちに改良型のTR4Aへと進化)は、イタリアの巨匠ジョバンニ・ミケロッティの手による流麗なデザインを採用しており、多くのエンスージアスト(熱狂的なファン)を虜にした。

湘南で見た映画のワンシーン! 月給1万円の時代に抱いた叶わぬ夢

「20代の頃に仕事の関係で神奈川県の逗子や葉山のあたりに住んでいたのですが、そこは休日ともなると高級車やスポーツカーが多く走っているエリアでした。そこで見かけたクルマのなかで、とくに印象に残ったのが赤いトライアンフ TR4だったのです」

半世紀も前の色褪せない思い出を嬉しそうに話してくれたのは、オーナーの永井昭栄さんだ。若い世代にはめちゃくちゃクラシックに映り、年季の入ったクルマ好きにとっては懐かしくも馴染み深い存在だろう。

「運転していたのは、いかにも裕福な家庭のおぼっちゃまといった風情の青年で、目の前を颯爽と走り去る姿はまるで映画のワンシーンのようでした。でも、自分の月給が1万円そこそこの時代に、200万円級のトライアンフを手に入れるなんて、当時の私にとってはまさに夢のまた夢だったのです」

半世紀越しの想いが結実! 奇跡の出会いを果たした運命の「トラヨン」

そんな若かりし日の鮮烈な思い出を胸に秘め、その後は地元の新潟県村上市に戻って長らく仕事を続けた永井さん。

「こちらに戻ってからはクルマやバイクを趣味として楽しんでいたのですが、いまから数年前、自動車雑誌の個人売買欄を見ていたら、真っ赤なトラヨン(TR4およびTR4Aの愛称)が売りに出されていたのです」

その時の永井さんにとっても決して安い買い物ではなかったそうだが、「半世紀前の思いを遂げるのは今しかない」と決意し、値引き交渉もせずに即断即決で購入したという。

こうして半世紀越しの夢を見事に成就させた永井さんが手に入れた愛車は、1965年式のトライアンフ TR4Aだ。リアサスペンションがリジッド(車軸式)からセミトレーリングアーム式の独立懸架へと進化を遂げたモデルである。

「現在は地元のイベント参加を中心に楽しんでいます」と、憧れのトラヨンとの生活を心ゆくまで堪能している永井さん。半世紀の時を超えて新潟の地を駆け抜ける赤いトライアンフの勇姿は、会場に訪れた小さな子どもたちに、かつての永井青年と同じような「クルマの夢」をしっかりと残してくれていることだろう。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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