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1億円超の落札価格! F1を超える電子デバイスを搭載した「アルファ ロメオ 155 V6-TI DTM」のナンニーニ車ってナニ?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

F1を凌駕したアルファ ロメオ 155 V6-TI DTMが約1億円で落札!

世界中を熱狂の渦の中に引き摺り込ませたカテゴリーのレーシングカーをコレクターズカーとして入手できるのは、超一流オークションならではの醍醐味でもある。ボナムズ主催のオークションに、1995年シーズンのDTM(ドイツツーリングカー選手権)を闘った「アルファ ロメオ『155 V6-TI DTM』」が出品された。DTMの最盛期をリードし、当時のF1マシンをも凌駕する技術が詰め込まれた怪物マシンの詳細と、驚きの落札結果の全貌に迫る。

世界最速のツーリングカーとして名を馳せたアルファ ロメオ155の軌跡をたどる

1992年から1996年にかけてのレースシーンで、アルファ ロメオ 155は世界最速のツーリングカーとして名を馳せた。FIAクラス1ツーリングカーの規定に適合した一連の155は、参戦したすべてのシリーズで勝利を収めている。

1992年シーズンには、ワークスドライバーのニコラ・ラリーニが「155 GTA」とともにイタリアツーリングカー選手権を制し、翌1993年には「155 V6-TI」でDTMも席巻した。もう一人のワークスドライバーであるガブリエーレ・タルクィーニも、1994年のBTCC(イギリスツーリングカー選手権)のタイトルを容易に獲得している。

いっぽう、155を駆るプライベートチームは1994年と1995年にスペインツーリングカー選手権で二連覇を果たし、DTMのレジェンドであるファブリツィオ・ジョヴァナルディがドライブするワークスチームも1997年に再びスペイン王座を獲得した。

こうしたヨーロッパのツーリングカー選手権での数々の輝かしいシリーズタイトルは、旧アバルト技術陣が指揮するアルファ ロメオのワークスチーム「アルファ・コルセ」が誇る驚異的な技術力を証明するものだ。そして彼らの象徴ともいうべきモデルが、正式名称を155 V6-TIとするアルファ ロメオ 155の最終形態なのである。

同時代のF1マシンを凌駕するテクノロジーを搭載した怪物マシンの詳細を見る

アルファ・コルセの手による155 V6-TIは、市販車とは似て非なる真の怪物である。鋼管チューブラーフレーム(鋼管スペースフレーム)と強化カーボンファイバー製セーフティセル(安全な乗員空間)を基幹とし、その外側を純正よりも薄いスチールパネルで覆う構造を採用していた。ボディワークは極めて剛性の高いクラッシュ構造を包み込む、いわばアウターシェル(外殻)にすぎなかった。

1993年シーズンの圧勝のあとも進化を続けた155 V6-TIは、実質的な最終バージョンとなる1995年モデルにも当時のライバルたちを驚嘆させた多くのメカニズムが継承されていた。たとえば、F1由来の調整可能なインボード式サスペンションシステムや巨大なベンチレーテッドブレーキは引き継がれながらも、Xtrac社製のパドルシフト式(ステアリングの裏側にある変速レバー)6速シーケンシャルトランスミッション(直列式変速機)が新たに採用されることになる。

そのかたわら、1995年からDTMを内包するかたちで移行したITC(国際ツーリングカー選手権)のレギュレーションが要求する安全装備には、ABS(アンチロックブレーキシステム)やトラクションコントロールが含まれていた。さらに1995年シーズン用のパワーユニットは、2.5リッター90度V6エンジンの4カムシャフトという基本は不変ながら、再設計された軽量型シリンダーブロックやニューマティック式バルブ(空気圧でバルブを駆動させる機構)を与えられた新エンジンとされ、大きな飛躍を遂げることになった。

アルファ・コルセ内で690RCと呼ばれたこのエンジンは、じつに1万1900rpmで490psを発生したと報告されているから、NAエンジンで1リッター当たり200馬力近いパワーを得ていたことになる。そして、歴代の155 V6-TIの最大の特徴である4WDのトラクションも相まって、0-100km/h加速はわずか2.5秒で達成され、長い直線コースであれば300km/hを超える最高速度を可能としていた。

すなわち、このマシンに採用されたテクノロジーの一部は、同時代のF1マシンのレベルさえも上回っていたことになるのだ。

怪我から復活したアレッサンドロ・ナンニーニが駆った歴史的価値ある個体の落札価格に驚愕!

先ごろボナムズ・オークション社の「MONACO 2026」セールスに出品されたアルファ ロメオ 155 V6-TIは、シリアルナンバー「SE062-004」である。SE062はアバルト由来の開発ナンバーであり、ちなみに1993年と1994年仕様の155 V6-TIはSE057であった。

この004は、車両の保管資料に含まれている1995年1月9日付のアルファ・コルセ社内部文書に記載されているとおり、1995年シーズンのDTMとITCシリーズで、ヘリコプター事故から奇跡の復活を遂げたワークスドライバーのアレッサンドロ・ナンニーニを搭乗させるために製作されたものである。

このシーズンからアルファ・コルセ・マルティーニのワークスカラーが施された004は、ナンニーニが7のゼッケンをつけてドライブしたものの、このシーズンは明らかな速さと絶え間ない不運が入り混じったものとなった。

ナンニーニはアヴスとノリスリンクという高速サーキットで2度の表彰台(いずれも3位)を獲得し、その競争力を示す。さらにディープホルツ飛行場サーキットでの4位入賞をはじめ、シーズンを通じてトップ5入りを重ねることで、マシンのポテンシャルを裏づけた。

しかし、こうしたハイライトがあったにもかかわらず、シーズン全体は度重なるリタイアに大きく影響を受け、結果として持ち前のパフォーマンスをチャンピオンシップのポイントへと結びつけることができなかった。また、ライバルであるメルセデス・ベンツ「Cクラス DTM」の台頭もアルファ・コルセの前に立ち塞がる。シーズン終了時、ナンニーニは総合11位にランクインしたが、この結果はサーキットで示された速さとポテンシャルを十分に反映したものではなかった。

振り返ってみれば、1995年シーズンは対照的な1年であった。7番のマシンがフィニッシュラインに到達した際にはしばしば上位争いに加わっていたものの、信頼性の欠如により上位のチャンピオンシップ結果を阻んだのだ。

こうして失意のうちに1995年シーズンを終えたアルファ・コルセは、1996年をもってITC選手権が廃止されるのと時を同じくして撤退を決定した。この004を含むアルファ ロメオ 155 DTMも、ヒルクライム選手権などに使用するプライベーターに放出された。

SE062-004は、当時定期的にレースに出場していたダル・デガン・ロリスなる人物が入手した。そして2014年3月に、今回のオークション出品者でもある現オーナーが有する個人コレクションに加わることになった。彼は自身のコレクションに収めたこのDTM用レーシングカーを、2019年の英国「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で自らドライブするなど、これまでとても大切にしてきたとのことである。

完全動態を保つ唯一無二のDTM怪物マシンが1億円オーバーの価値を生み出す

この個体は、かつてDTMやITC選手権を闘っていた当時のスペックに完全に合致するという。純正ECU(エンジンコントロールユニット)を含むすべてのコンポーネンツが完全なコンディションを保っており、走行可能な状態にあるという点で唯一無二の存在だ。ほかの現存車両には、オリジナルの状態を保っているものやそもそも走行可能なものが稀であるのとは対照的とされる。

ボナムズ・オークション社はこのアルファ ロメオ 155 V6-TI DTMについて、「卓越した血統を誇るこのファクトリー仕様の155 V6-TIは、アルファ ロメオのDTM史に刻まれた1台であり、モータースポーツに焦点を当てたプライベートコレクションにもふさわしい、ツーリングカーの生ける伝説といえるでしょう」と正統性を強調したうえで、50万ユーロから60万ユーロ(邦貨換算価格で約9200万円から約1億1040万円)という推定落札価格を設定した。

そして迎えたオークション当日、オテル・フェアモントで行われた競売では、推定落札価格の範囲内に収まる55万2000ユーロで落札された。現在の為替レートで日本円に換算すれば約1億156万円で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

約1億円というプライスタグは、同時代のF1マシンを凌駕するテクノロジーと、奇跡の復活を遂げたナンニーニが駆った歴史的価値を考えれば、決して高すぎる金額ではないのかもしれない。しかし、この490psを発揮するオリジナルの暴れ馬を当時のスペックのまま完全に乗りこなすのは、それこそ本物のレーシングドライバーにしか不可能な芸当だろう。一般のクルマ好きにとっては、走行可能という唯一無二の「生ける伝説」をあえて全開で走らせることなく、ガレージの特等席に飾って心ゆくまで眺めることこそが、新しいオーナーに許されたもっとも贅沢で安全な楽しみ方なのかもしれない。

※為替レートは1ユーロ=184円(2026年6月23日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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