Mシリーズではわずか101台の右ハンドル仕様! 希少ディノが約5750万円で販売
2026年7月8日に英国で開催された「The Woodcote Park Auction 2026」に、「ディノ246 GT」の右ハンドル仕様が登場した。右ハンドル仕様は初期/中期/後期で構成されるディノ246GTシリーズ全体でも世界でわずか488台しか製造されていない。ここに登場する車両は、中期型となる1971年生産の「Mシリーズ」であり、しっかりとフェラーリ・クラシケの認定も取得できている。かつて「フェラーリ」の名を冠さなかったV6ミッドシップの名車が歩んだヒストリーと、ここに登場する世界に2台しか存在しないという希少なルーツを探ってみよう。
創業者の亡き愛息に由来する名機V6エンジンを搭載
1969年1月にデビューした「ディノ206 GT」は、フェラーリにとって初のミッドシップ市販車であった。その車名は、24歳の若さで亡くなったエンツォ・フェラーリの愛息であるアルフレディーノ(愛称:ディノ)に由来している。
それまでのフロントV12気筒エンジンを主力としていたフェラーリのロードカーから一転し、ディノが病床(筋ジストロフィー)で開発に関わったレース由来のV型6気筒エンジンをキャビンの背後に横置き搭載した。このコンパクトなV6エンジンは、のちに世界ラリー選手権(WRC)を席巻した伝説のマシン、ランチア「ストラトス」にもそのまま搭載されたことでも知られる、自動車史に残る名機である。
しかし当時、エンツォは「V12気筒以外はフェラーリと認めない」という強いプライドを持っていた。そのため、このクルマには「フェラーリ」のブランド名や「跳ね馬」のエンブレムは与えられず、新たなブランドである「Dino(ディノ)」として発売された。1969年3月には排気量を2.4リッターへと拡大してパワーと洗練度を高めたディノ246 GTが登場し、1974年までにクーペモデルのGTが2487台、スパイダーモデルのGTSが1274台生産されている(諸説あり)。

短期間のみ生産された希少なMシリーズの特徴を持つ
ディノ246 GTの生産期間は、細かな仕様変更によって「L」「M」「E」という3つのシリーズに分類される。今回出品されたシャシー番号「01602」の個体は、1971年初頭のわずかな期間に約507台のみが生産された「Mシリーズ」に属している。
このモデルには、5穴式のクロモドラ製アルミホイールや、パラレル式(並行同調型)のワイパー、シートマウント型のヘッドレストなど、初期モデル(Lシリーズ)とは異なる特徴的なアップデートが施されている。さらに、全シリーズを通して世界でわずか488台しか存在しない右ハンドル仕様であり、Mシリーズではさらに少数の101台のみという事実も、この個体の希少性を大いに高めている。
英国のエンスージアストによって極上の状態が維持
1971年2月に完成したこの個体は、アルジェント・オートゥイユ(シルバー:全シリーズを通しても非常に希少色)のボディにブルーのフェイクレザーインテリアという、現在と同じ魅力的なカラーコンビネーションで出荷された。新車時には、イギリスの正規輸入代理店である「マラネロ・コンセッショネア」を通じてデリバリーされている。
1983年以降の膨大な整備記録や車検証明書(MoT)、そしてイギリスのコンクール・デレガンスでの受賞歴が示すとおり、歴代のオーナーによって手厚い保護を受けてきた。2007年に現在のオーナーの手に渡ってからも、著名なフェラーリスペシャリストによってエンジンやギアボックスのオーバーホール、サスペンションの刷新などが行われている。

その結果、2016年にはフェラーリ・クラシケ(メーカー公式のクラシックカー認定部門)の「レッドブック」認証を取得し、エンジンやギアボックスの「マッチングナンバー(車両製造時のオリジナル部品であること)」が公式に証明された。取扱説明書やパーツリスト、保証書、専用のツールキットなども完備されている。
「左ハンドル至上主義」のコレクター市場における適正な相場価値と「世界に2台だけ」という希少性のせめぎ合い
ちなみに、1971年当時の日本におけるディノ246 GTの新車価格は約900万円であった。1970年代初頭の大卒初任給が約4万〜5万円、当時のトヨタ「クラウン(4代目)」の上級グレードが約100万円前後であった物価水準を考慮すれば、現代の価値に換算しておよそ4500万〜5000万円以上に相当する。また、スーパーカーブーム絶頂期の1977年における中古車相場をみても、390万円からという高額なプライスタグが掲げられており、当時の高級車を優に超える高嶺の花であったことが窺える。

今回のオークションにおいて、この個体には25万〜30万ポンド(邦貨換算約5425万円〜6510万円)のエスティメート(推定落札価格)が設定されていたが、結果的に落札には至らず、最終的に26万5000ポンド(邦貨換算約5750万円)の希望価格(Asking)で販売継続となっている。
なぜエスティメートに届かず流札となったのだろうか。その背景には、クラシック・フェラーリ市場特有の事情が透けて見える。「Mシリーズでわずか101台の右ハンドル仕様」はイギリスや日本、オーストラリアなどの一部地域では希少個数となるが、グローバルなコレクター市場においては、本国仕様である「左ハンドル」にプレミアムがつく傾向が強い。フェラーリ・クラシケ認定という完璧な履歴を持ち合わせているとはいえ、右ハンドルである点や現代の物価水準(約4500万〜5000万円)を加味すれば、いいところで5000万円前後が市場の妥当な評価だったのかもしれない。
しかし、Auto Messe WEB編集部がディーノ専門のデータベース『Dino Compendium』などを通じて独自に調査したところ、この中期型Mシリーズでアルジェント・オートゥイユのカラーリングを纏い、右ハンドル仕様というのは……驚くことに世界に「わずか2台」(※諸説ある)という超希少な仕様であることが確認された。ということを考え合わせると、シャシー番号「01602」の世界にたった2台という希少性を重んじる英国人コレクターがいなかったことの方が、意外と言えるのかもしれない。
※為替レートは1ポンド=217円(2026年7月15日時点)で換算




































































