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「ドア追加」だけじゃなかった! 340mm延びた「ジムニーノマド」の走りは舗装路も悪路も素敵でした

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 真壁敦史

5ドア「ジムニーノマド」試乗記、ジムニーシエラとの違いをオンロード・オフロードで検証する

ジムニーシリーズ初の5ドアとして登場したジムニーノマド。ホイールベースを340mm延ばし、後席と荷室にゆとりを得た一方で、気になるのはその延長がジムニー本来の走りにどう響いたかである。レーシングドライバーでジャーナリストの木下隆之氏が、愛車である3ドアのジムニーシエラと比べながら、舗装路から未舗装路まで走り込んで検証した。

「ドアが2枚増えただけ」という先入観からのスタート

ジムニーシエラを愛車にしてからというもの、私の休日は少しだけ忙しくなった。

走ることはもちろん好きなのだが、それ以上に楽しいのは、カスタムパーツのカタログを眺めながら、「次はどこを変えようか」と考えている時間である。

ホイールはどれにするか。タイヤサイズはどうするか。サスペンションを替えれば乗り味はどう変わるのか。そんな妄想を繰り返しているだけで、あっという間に夜が更けてしまう。

クルマとは移動の道具である前に、趣味そのものなのだ。

だからこそ、新しく登場したジムニーノマドには、人一倍興味があった。

正直に言えば、最初は「ドアが二枚増えただけではないのか」と思っていた。ジムニーらしさは、あの短いホイールベースと軽快な身のこなしにある。五枚ドアになれば居住性は改善され、ファミリーユースを考えれば格段に便利にはなるだろうが、その代償としてジムニーらしい魅力が薄れてしまうのではないか。そんな先入観があったのである。

「4人で旅へ」を現実にした5ドアの余裕

ところが実際に乗ってみると、その思い込みはあっさり覆された。

ノマド最大の特徴は、シエラより340mm延長されたホイールベースにある。その延長分はすべてBピラーより後方に与えられ、後席の足元には50mmの余裕が生まれた。荷室も350mm拡大され、肉厚になったリアシートにはリクライニング機構まで備わる。

数字だけを並べれば「広くなりました」という話で終わる。しかし、実際の印象はそれ以上だった。

私のシエラは、ほとんど後席を倒したままで使っている。荷室は広大だし、二人で乗るぶんには何ひとつ不満はない。むしろ3枚ドアという割り切りが、シエラの個性でもある。

ところがノマドに座ると、使い方が変わる。

「今度は4人で旅へ出よう。」

そんな景色が自然と頭に浮かぶのである。

荷物を積み込み、家族や仲間と海へ向かう。高速道路を何100キロも走り、その先で林道へ入っていく。シエラでは少し遠慮していた使い方を、ノマドは当たり前のように受け止めてくれる。

これは3枚ドアの延長ではない。ジムニーという世界を少し広げた、新しい選択肢なのだ。

まるで一回り上のSUV、ジムニーノマドのオンロード性能

そして驚かされたのは、走りの完成度である。

ホイールベースが340mmも伸びれば、普通なら重さや鈍さが気になるところだ。しかしノマドは、シャシー剛性を高め、サスペンションを見直し、プロペラシャフトを強化し、重量増に対応してフロントブレーキもベンチレーテッドディスクへ変更するなど、見えない部分まで丁寧に手を入れてきた。

その成果は、走り始めてすぐに分かる。

「あれ、本当にラダーフレームだったかな。」

そう思ってしまうほど、舗装路での身のこなしが穏やかなのだ。

シエラでは路面の継ぎ目を越えるたびに上下動が少し大きく、頭が左右へ揺すられる場面もある。

だがノマドは違う。

ピッチングは落ち着き、突き上げは角が取れ、オンロードでの振る舞いは、まるで一回り上のSUVに乗っているような安定感を見せる。

オンロード性能だけを比べれば、私のシエラとは別物と言っていい。

2Hのままでも進めた、ノマドのオフロード実力

一方で、「長くなったぶん、クロカン性能は落ちるのではないか」という心配もあった。

ホイールベースが延びれば、ランプブレークオーバーアングルは不利になる。岩場や丸太を跨げば腹を擦る可能性は高くなる。

ところが実際にオフロードへ入ると、その不安は思った以上に小さかった。

モーグル区間でもタイヤはしっかり接地し、LSDブレーキ制御が絶妙に駆動力を配分していく。驚いたのは、トランスファーを2Hのままでも難なく進んでしまう場面があったことだ。

もちろん密林や、本格的なロッククローリングまで求めるなら話は別だろう。

しかし、日本でノマドを選ぶ多くのオーナーが走るであろう林道やキャンプ場、雪道や未舗装路であれば、その実力に不安を感じることはまずない。

パワーユニットはシエラと同じ1.5リッター自然吸気エンジンだから、劇的な速さはない。だが、このクルマにはそれでいい。むしろ急ぐことを忘れさせてくれるテンポこそ、ジムニーらしい味わいなのだ。5速MTを選べば、その軽快さはさらに際立つ。

ジムニー・シエラ・ノマド、それぞれの役割

シエラを所有している私は、いまでも自分のクルマが好きだ。カスタムを考える時間も、少し不便な3枚ドアも、すべて含めて愛着がある。

それでもノマドに乗ると、「もう一台ジムニーを持つなら、これもいいな」と素直に思ってしまった。

ジムニー、シエラ、そしてノマド。

三兄弟は見た目こそ似ているが、それぞれ役割はまったく違う。

山を駆け回る機動力ならジムニー。趣味の相棒として付き合うならシエラ。そして旅を愛する大人のジムニーとして選ぶならノマド。

ノマドを眺めながら、私はまた新しい妄想を始めてしまった。

ホイールは何を履かせよう。少しだけ車高を上げるか、それともオンロードを極めるローダウン仕様にするか。

ジムニーというクルマは、走る楽しさだけでは終わらない。

オーナーの想像力まで走らせてしまうから、困るのである。

【詳しくはこちら】
◆スズキ・ジムニーノマド公式H.P
https://www.suzuki.co.jp/car/jimny_nomade/

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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