発電の余剰分を蓄えるシステムに利用
トヨタでも、プリウスなどHV用の使用済みニッケル水素電池を活用した定置型蓄電システムを開発し、2013年から全国のトヨタ車両販売店向けに販売を開始している。
また、2018年には中部電力と共同で、電力の供給余剰分を蓄え需給調整に使う大容量蓄電池システムの構築などの実証実験を実施している。
HV用バッテリーは容量よりも、車両を走らせるための瞬発力に特性を特化しているため、定置型として二次利用するならEV用のリチウムイオンバッテリーが本来は適している。また、将来的なEVの増大を考えると、リチウムイオンバッテリーの二次利用は不可欠だといえる。
そのため、トヨタと中部電力では、開発中の蓄電池システムに中古リチウムイオンバッテリーの活用も予定していることを発表している。
海外では、アウディが、初の量産EV「e-tron」の開発車両で使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを、定置型蓄電池として二次利用する取り組みを行っている。
ベルリンの再開発地区「EUREF-Campus」において、風力や太陽光で発電した電力のうち、余剰電力を蓄えるユニットにe-tronの中古バッテリーを活用、2019年5月から運用を開始している。
バッテリーパックの二次利用を前提にした空冷式
バッテリーの二次利用のしやすさで考えると、車載するバッテリーパックは構造が簡素な「空冷」が望ましい。ドイツ車に多く見られる「液体冷却」にすると、バッテリーパックからセルごとに分解するのに手間がかかるためだ。
その意味で、リーフのバッテリーパックを空冷とした日産が世界最先端だといえる。EV発売前にフォーアールエナジー社を創立した意味がそこからうかがえる。
クルマの性能第一でバッテリーパックを液冷却している自動車メーカーは、まだ中古バッテリーの二次利用の意味を理解できていないのである。
EVが普及すれば環境問題が解決するわけではなく、その後に必ず出る「中古バッテリー」をどう使い尽くすかも極めて重要だ。そこまで視野に入れた電動車両の開発をしてこそ、はじめて環境保全に寄与する「EV普及」の意味が深まるのである。