「ニュル」も「十勝」も戦ったプロフェッショナル! 過酷さを知り尽くす職人レーサーから見た富士24時間レース (2/2ページ)

2021年はトラブルに見舞われたがバッチリ対策

 さて昨年24時間レースに初出場した“自己啓”はスタートから数周でいきなり原因不明のトラブルを抱え、その解明から先の見えない、苦行の戦いが始まる。工場に残したスペアパーツを栃木まで取りに行く無駄も経験する。若さだな、と思ったのは食事時間になっても問題解決に没頭し、目をギラギラさせながらクルマに飛びついている。何としても早く復帰させたい、その思いがヒシヒシと伝わり、思わず涙ぐんだことも蘇る。

 昨年の原因はチームで解明されたので、今年は大丈夫なハズ。量産車をベースにロールケージが張り巡る、いかにもレースカー然とした内装にエアジャッキが取り付けられたスーパー耐久仕様だ。ハンコックのスリックタイヤを履き、コーナリングスピードもブレーキ性能も高まる。ブレーキそのものはエンドレス製大型キャリパーと大型ローターに交換して、最高速から急減速の連続に耐える。

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 ラジアルタイヤでは得られない大きなグリップ力を受けて、高い速度域での操縦性と安定性をどうバランスさせるか。連続走行して得られた知見が、今後の量産車開発にも活かされる事は間違いない。

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 チームを支える、ホンダのこれからを担う若いヒトたちの職種は多岐にわたる。昨年は初参加なうえにトラブルシューティングに明け暮れ、関係者各人と話す機会がなかったが、2年目の今年はガレージ内の空気に余裕とともにメリハリがある。セッションが開始するというとピンと張り詰めた空気に変わい、終了すると各自に作業内容の指示が飛ぶ。なんだか凛々しく思える。

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 各人ひとりひとり、全員から普段の業務内容を聞いてみた。その多岐にわたる職種を聞くと、なるほどそうだろうな、と思うテスト担当のほか、研究者、開発エンジニアもいる。クルマ一台を造り上げるのに、どれほど多くのヒトたちが関わっているのか、あらためて開発したクルマをわが子同然に思う気持ちが理解できる。フジトモとともに、何故これを昨年やらなかったのかと、後悔する。

 具体的には、レースカーと同じシビック・タイプRに関わったというヒトをはじめ、エンジンをテストベンチで回しデータを取る、エンジンのドライバビリティをチェックしているといったヒトも。また、シート研究担当や新生ステップワゴンのシャーシや新型シビックのエンジンECU担当も。さらに未来のパワーユニットの研究も行っているという。

 そして、ホンダ車のモータースポーツ活動を促進する立場のヒト。もちろん彼らをまとめる監督。車輌の運搬。そしてこのシビック・タイプRの開発責任者で次期型も担当する柿沼秀樹さんもいる。柿沼さんはリーダーではなく、かつて自分がそうだったように、まずは行動させ、兄貴のようにやさしい眼差しで彼らの動向を見守り、ここは今言わねばという場面でコメントする。

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 自己啓そのものは2019年からが現在のスタイルで、他メーカーはそのやり方に注目している。羨ましいと口にする他社の方もいるが、隣の芝生は青く見える、である。それはその逆も言えることを、今年あらためて感じる!?

今年のレース決勝は大きなトラブルなく進行

 そして24時間レース本番は……これが嘘のように何も起らない。燃料補給とドライバー交替とタイヤ交換のルーティンワークを淡々とこなしていく。途中10分間停止が義務づけのメンテナンス時間がある。そこで時間をロスした分、ペースカー走行が長引いた場合の燃料補給なりを、その場その場で対応していれば、タラレバだが表彰台は見えていた。

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 外から見れば「ホンダR&Dチャレンジ」は立派なワークスチームに見える。今年、日産・ニスモが加わることで、ピットのコマ割はトヨタ、スバル、日産、その真ん中にホンダは置かれて目立つこと!!

 昨年あれほど、もがき苦しんだレース展開。それを今年は周りのワークス勢すべてが持っていく!! 対してわれわれはまったくノートラブル。終盤に他車との接触で外れ掛かったパーツを補習した程度だった。イエローフラッグ中の追い越し(戻ったが)によるピットのドライブスルーペナルティはあったが、問題はそれだけ。

 レースの女神の気まぐれさをあらためて知るレースである。24時間の2年目、スタッフ全員が眠く気怠い思いをしたものの、目標の完走は果したから疲労度は軽い(ハズ)。56台がスタートして総合22位、ST2クラス4位。リタイヤした車輌は全クラスで7台と量産ベース車輌は完走率も高い。こうしてレースで鍛えられて、量産もレース車輌も強くなる。同時にヒトも鍛えられ強く逞しく育つ。

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 海外とも、かつての十勝24時間とも違うことは、ライトONの時間帯。コーナーの要所要所を立派な照明設備でこうこうと明るく照らしてくれる。夜、暗闇からスタートした還暦ドライバーにも、これなら問題なく見える。過酷なレースか? と聞かれれば、海外では3名か4名のドライバー構成。今年も6名の布陣では90分に満たない乗車を2スティントのみだから、疲れる訳がない。

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 それよりも無事完走したことで、メンバー全員に自信がついたであろうことが重要だ。とはいえ、まだまだサーキットの早い時間の回り(1時間は40分に感じる!?)に対応する動きに課題が残る。もの事を確実に、は当然だが早く仕上げることも重要性であり、限られた走行時間をいかに有効に使うかがカギ。走行時間の合間合間の時間こそ早業が必要だが、レースに取り組む上での重要性も理解したと思う。

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 今年のスーパー耐久、残りのラウンドは次の菅生はルールにより不参加となるが、阿蘇のオートポリスも初遠征。コースの違いによっていろいろなことが起る可能性もある。それも以降は全戦に参加する予定だ。自分がドライブしなくても、ホンダR&Dチャレンジの戦いぶりを応援しに行こうかと思う今日このごろ……。

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