広い分野でADバンの活躍の場が想定できた
またバンにとって重要な荷室まわりについては2見開き/4ページを割いて紹介。「5人+250kg積」と「2人+400kg積」とあるほか、荷室サイズは5人乗り、2人乗りそれぞれの高さ、幅、奥行きが記されているほかに、ハネ上げ式バックドアの開口高さ(1800mm)や床面地上高(555mm)などが記されている。ホイールハウス間の間隔は1105mmと表記されており、十分なスペースが確保されていたことがわかる。セミハイルーフによる余裕のある後席ヘッドクリアランス、バックドアロック、2ドア2シーター(サニーADバンのみに設定)の荷室フロア下のユースフルスペース、明るい荷室ランプなどの紹介も。
そしてもうひとつの見開きは、具体的なモジュールを紹介。見ると「具体例」は多岐に及んでいて、サンキストのオレンジの箱(27個)、パン屋のサンジェルマンのプラスチックケース(34個)、サッポロドラフトビールの箱(26個)をはじめ、日立の14インチTV(6個)や電子レンジ(4個)の箱、ゴルフバッグ(30個とは本当だったのだろうか?)、背広ケース(72個)などが載っている。
以上は「画(え)」にしやすい事例であり、もちろん電気工事、塗装工など技術系や職人さん系であったり、ルートセールスといった営業など、広い分野でADバンの活躍の場が想定される。思えばADバンが登場したこの時代は、まだ今ほど宅配は普及していなかったから、何か小口で運ぶものがあれば自社で……となったはず。そうした小型のボンネットバンの活躍の場、ニーズに対してADバンが応えるクルマだったのである。
ディーゼル車で燃費29.1km/Lを記録
ハードウェア面では、前述のとおりFF化したB11型サニーのそれをベースに、搭載エンジンは1.5Lと1.3Lのガソリンと1.7Lのディーゼルが設定された。当時の60km/h定地走行燃費で1.5L 5速フロアシフト車が24.0km/L、ディーゼル車で29.1km/Lと、経済性にも優れている点もアピールポイントのひとつだった。
なおサニー、パルサー、ダットサンの各ADバンの表紙を並べたカタログは、1985年9月のマイナーチェンジ時のもの。この時にフロントまわりではヘッドライトがSAE規格の角形に変わるなどした。
またADバンはその後、2代目(Y10型・1990年)、3代目(Y11型・1999年)と続き、2006年から現在の4代目(Y12型)へと続いている。この間にOEM車としてマツダ・ファミリアバン(1994〜2018年)、三菱ランサー・カーゴ(2008〜2019年)、スバル・レオーネバン(1994〜2001年)などの派生車も生まれた。このうちファミリアバンについては、2008年からはトヨタ・プロボックス/サクシードのOEMに切り替わった。