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「エンジンのホンダ」は幻となった「スポーツ360」から始まった! 昭和のカリスマ本田宗一郎のスピリットとは?

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TEXT: 塩見 誠(SHIOMI Makoto)  PHOTO: AMW編集部/自工会

市販されなかった理由は排気量にあった

スポーツ360、ここでは一般に知られているS360という名称を使うが、このクルマは2シーターのオープンカーだった。パイプフレームにFRP製ボディを載せたこのモデルは、1962年6月、建設中だった鈴鹿サーキットでのディーラー向けイベントでお披露目された。

その後、同年10月に晴海で開催された第9回全日本自動車ショウ(のちの東京モーターショー)で一般にも公開されたのだが、市販はされなかった。同時に開発されていた、同じDOHC 4気筒360ccエンジンを搭載する軽トラックのT360は1963年8月に市販されたのになぜ、と当時の人は思ったことだろう。しかしホンダ社内では、早い段階でS360の市販化計画は断念されたと、いまに伝わっている。

大きな問題は、小排気量によるパワー不足であった。国内市場だけではなく、北米での販売も考えていたホンダとしては、360ccでは売れない、と判断したのだ。そこで車幅を拡大し、排気量を500ccに拡大したS500が開発され、1963年10月に市販されている。その後S600、S800と排気量を拡大していったのも、つまりは同じパワー不足という理由からだった。

S360のメカニズムは、エンジンの排気量が違うとはいえ、S500やその後に発売されたS600、そしてS800の前期型と基本的に同じであった。ファイナルドライブへのチェーンの採用や、アルミ製チェーンケースがトレーリングアーム兼用となっている独立懸架式サスペンション機構などもそうだ。これは二輪メーカーならでは、といえるものだったが、信頼性という面から見ると一般的なドライブシャフト方式のほうが優れていたために、S800の後期型からはプロペラシャフト+リジッドアクスルへと変更されている。

S360は、社内展示会と全日本自動車ショウで展示された試作車以外には製作されておらず、その試作車ものちに解体されてしまっている。しかし2013年、社内有志によるプロジェクトにおいて、レプリカが製作されている。S600をベースとしたこの個体は、T360のエンジンを搭載し、試作車の設計図面からボディなどを再現したもの。

一部パーツはプロトタイプのものを流用した、きわめて試作車に近いものとなっていて、2013年10月、ツインリンクもてぎ(現・モビリティリゾートもてぎ)で開催されたホンダスポーツ50thアニバーサリーというイベントと、第43回東京モーターショー2013会場で公開された。現在はモビリティリゾートもてぎにある、ホンダコレクションホールで展示されている。

四輪メーカーとしてのホンダ、という基礎を築いたのと同時に、スポーツ=ホンダというイメージの元となったのがS360というクルマだ。もっといえば、エンジンのホンダというのも、このクルマが大元となっている。この先原動機は、電動モーターやハイブリッド、水素エンジンなどさまざまなものへと変わっていくのだろうが、小規模な二輪メーカーであったホンダが総力を挙げてつくったこのクルマは、未来に残すべきものであることは間違いがない。 

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  • 塩見 誠(SHIOMI Makoto)
  • 塩見 誠(SHIOMI Makoto)
  • 1965年生まれ。学生時代からオートバイとクルマに熱中し、自動車雑誌編集ののちフリーランスライターに。これまでAE86トレノ、CC72Vアルトワークス、E38AギャランVR-4RS、1980年式シロッコ、CD9Aランサー・エボリューション、プジョー306スタイルなど、クルマを乗り継ぐ。オートバイはCB250RS、RZ250、ZZ-R1100、T-MAXなどつねに複数台所有。現在の愛車はフタ桁ナンバーのアルファ ロメオ156V6とサーキット遊び用のNCP91ヴィッツRS・TRDターボM、JA45クロスカブ。
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