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「ワーゲンバス」が約1700万円で落札! 著名な冒険家が所有したオリジナル要素を残した貴重な1台でした

「ワーゲンバス」が約1700万円で落札! 著名な冒険家が所有したオリジナル要素を残した貴重な1台でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

オリジナルを可能な限り残したレストア

今回RMサザビーズ「MIAMI 2024」オークションに出品された1961年式23ウインドウ デラックス マイクロバスは、初期型として注目に値する1台。1961年は、小さく魅力的なテールライト/方向指示器が採用された最終のモデルイヤーだった。

前オーナーの証言によると、もともとはマサチューセッツ州ビヴァリーに本拠を構えるVW正規代理店「ネイサン・B.タッカー・フォルクスワーゲン」社を介して、一族が経営する配管器具メーカーの遺産を受け継ぐとともに、太平洋諸島の探検でも知られた冒険家、コーネリアス・V・クレーンに販売されたという。

クレーン氏とその家族は、ニューイングランド各地でこのマイクロバスを楽しんだとされるが、旅の足となっているとき以外は、ビヴァリー市ダンバース川河口にあるチョート島のクレーン家所有地に保管されていたとのことである。

しかし、コーネリアス・V・クレーンがこのクルマを楽しめた期間は短いものだった。1962年に、ファーストオーナーである彼は逝去してしまうのだ。それでも数年後、このT1マイクロバスは熱狂的なファンの手に渡ることになり、そののちも好意的な所有者たちのもとで大切に保管されてきたとのことである。

そして、今回のオークション出品者である現オーナーがこのクルマを手に入れる直前に、カリフォルニア州フラートンの名門レストアラー「WCCR(ウェストコースト・クラシック・レストレーション)」社によって2年間の歳月をかけたレストアが施され、ボディワークは「シーリングワックス・レッド」と「ライト・ベージュ・グレー」という、T1サンバとしてはとりわけ印象的な2トーンを可能な限り維持するように補修ペイントが施された。

このレストアは素晴らしいレベルで仕上げられ、美しい塗装とオリジナルそっくりのオーバースプレーが部分的に施され、下まわりには黒のアンダーコートと酸化レッドのプライマーが塗られた。

また、純正オリジナルのグラブハンドルとハードウェアは美しい艶を見せ、ダッシュボードにはオリジナルの「タッカー」ディーラーによるシフトパターン表示デカールさえ貼られたままというオリジナリティを誇っている。

これまでに施されたレストアの領収書も添付されたこのT1マイクロバスは、使い古された言葉を使うなら、まさにアイコニックなモデル。ひとつの時代を象徴し、たとえばサウスビーチをクルージングするときには、誰もが笑顔になってしまうクルマ。

RMサザビーズ北米本社が、そんな謳い文句とともに設定したエスティメート(推定落札価格)は、15万ドル〜20万ドル。これは、2010年代中盤以降の23ウインドウとしては妥当なものだったはずながら、実際に競売が始まってみると予想外にビッド(入札)が進まず、最終的にはエスティメート下限を大きく割り込む11万2000ドル。つまり日本円に換算すると、約1700万円で落札されることになった。

このハンマープライスは、円安の続く現在の為替レートにおいて、われわれ日本人にはけっこうな高値にも映るだろう。でも数年前までの相場ならば、エスティメートくらいの価格が順当だったはずである。

ただ、この1カ月ほど前、2024年2月にパリで開催された「アールキュリアル」オークションにて、近い条件の「23ウインドウ」が9万1784ユーロ、約1500万円で落札されている事例も合わせて考えると、どうやらT1サンバの世界市場は沈静傾向にあるとみるべきなのかもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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