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14億円オーバー! 廃品置き場にあったメルセデス・ベンツ「300SL」は貴重なアルミボディでほぼオリジナル、しかもルイジ・キネッティの愛車でした

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TEXT: 山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

29台しかないアルミボディだった

その「ジャンクヤード:ルディ・クライン・コレクション」からは、すでにジャンクと化した何台かの歴史的遺産をAMWにて紹介してきたが、はたして今回のオークションにおいて最高値で取り引きされたモデルは何だったのだろうか。それは1956年式のメルセデス・ベンツ「300SL」。

落札価格はじつに935万5000ドル(邦貨換算約14億3393万円)で、その理由は、トータルでも1371台しか生産されていない300SLの中でも、さらに29台が存在するのみの、アルミボディを持つモデルであることだ。

メルセデス・ベンツの資料によれば、今回の出品車は1956年に完成した26番目のアロイボディ仕様の300SLであるという。ちなみに同様のアロイ300SLは、2022年にもRMサザビーズのオークションに姿を現しているが(こちらは内外装とも素晴らしいコンディションだった)、その時の落札価格は501万ドル(同7億6793万円)と今回の半額程度だ。クラシックカー市場での300SLの人気はまだまだ上昇基調と判断できそうだ。

ボディカラーは黒からシルバーへ再塗装

シャシーナンバー「198.043.5500872」が与えられたこの300SLは、出荷時にはブラックのボディカラーに、レッドレザーの内装という、非常に美しいコントラストを持つモデルだった。

それを証明するデータカードには、アルミボディをはじめ、高性能なNSLエンジン、スポーツサスペンション、フロントガラス洗浄システム、3.42のファイナル・ギアレシオなども記録されている。ファースト・オーナーはレーシング・ドライバーとしてル・マン24時間での優勝経験もあり、のちにフェラーリなどの北米レーシングチーム、「N.A.R.T.」をオーガナイズする、かのルイジ・キネッティ。

ルディ・クラインは、1976年のデイトナ500にエントリーした際にキネッティに出会い、レース会場で3000ドルの前金を支払い、この300SLを購入したことがキネッティの書類には残されている。しかし、1977年3月初旬までキネッティの手元にあり、その間に、ボディカラーはシルバーに直されていた。その後、キネッティから受け取ったこの車両は、廃品置き場の中央の建物の中にしまわれ、現在に至る。

現在でも走行が可能なアロイボディの300SL。そのオドメーターには7万3387kmの数字が刻まれている。ボディナンバーの26を始め、エンジン、ギアボックス、リアアクスル、ステアリングボックス、フロントスピンドルはすべてオリジナルのまま。レースで酷使されアクシデントに遭うことも多かった、レースから市販車への道を歩んだモデルの中で、この個体ほど良好な環境で保存されている車両はきわめて稀といえるだろう。驚愕の落札価格は、それをダイレクトに物語っているのである。

>>>Gクラスを特集したメルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.222を読みたい人はこちら(外部サイト)

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