長らく日本にいた、レース歴のない奇跡の1台とは?
このほどボナムズ「Scottsdale 2025」オークションに出品された、この注目すべき924カレラGTR、シャシーナンバー「72010」は、日本に新車として販売されたわずか2台のカスタマー向けGTRのうちの1台と考えられている。
当時のポルシェ日本総代理店である「三和自動車」(のちのMIZWA)は、この生粋のレーシングマシンを約2年間にわたって社内で保有し、そののち日本のビジネスマンに売却したとのこと。そして実質的な初代オーナーである購入者は、長らく自身のガレージで大切に保管するとともに、年に一度はポルシェのスペシャリストに運ばれて年次点検を受け、エンジンやトランスミッションなど機関部のフルードを循環させるために、ごく短距離を走らせていたといわれている。
また、鈴鹿サーキットおよび富士スピードウェイにて数回は走行したとの記録も残っているそうだが、公式レースで走ったという記録は残っていない。2016年にイギリスに渡り、販売された時の走行距離は、わずか109kmに過ぎなかったとのことである。
わずか17台しか製造されていない
公式オークションカタログによると、
「この特別な924カレラGTRは、一度もレースで走らせたことがないため、非常にオリジナルなコンディションを保っている。わずか17台しか製造されなかった924カレラGTRのうちの1台であり、レースにも出場していない唯一の1台」
と記されているのだが、じつは日本に来たもう1台、白い924カレラGTRも公式レース歴がないと判明していることから、少なくともこのカタログの記述には事実誤認があるということになる。
ちなみにもう1台の白い個体は、2022年にパシフィコ横浜で開催された旧車トレードショー「ノスタルジック2デイズ」に展示。長きにわたって姿を見せていなかったそのGTRが、同イベントのスターとして脚光を浴びたことをご記憶のかたもいらっしゃることだろう。
したがって、今回の赤いオークション出品車は唯一のレース歴のない個体ではないとはいえ、その偉大さは間違いないもの。同じカタログに記された、
「究極のトランスアクスル・ポルシェ、シュトゥットガルトのモータースポーツの歴史における重要なマイルストーン」
という記述には、誤りも誇張もないと思われる。
かくしてボナムズ社は、この超レア度とヒストリーを考慮して45万ドル~55万ドル(邦貨換算約6700万円〜約8200万円)という、「レン・シュポルト」なポルシェとしては順当ともいえそうなエスティメート(推定落札価格)を設定する。
ところが当日の競売ではリザーヴ(最低落札価格)まで至らなかったようで、残念ながら流札。現在でも当初のエスティメートのまま、継続販売となっているようだ。




























































































































