シャシーやエンジンはマッチング済み
2025年1月24日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいて、ポルシェ「911 カレラRS 2.7ツーリング」が出品されました。出品車は、1973年2月15日にラインオフしたドイツ国内向けのRSツーリングで、25台と希少なホモロゲーション・モデルの中の1台でした。
元来ホモロゲ・スペシャルとして開発されたカレラRS
2022年にレジェンドカーであるポルシェ「911 カレラRS」が誕生50周年を迎えた。ナナサンカレラだから違うでしょ? と言うなかれ。じつはこの911 カレラRSは、1972年10月5日、当時のパリサロンでお披露目されているため、2022年が誕生50周年となるわけだ。
1972年10月の発表から遡ること2カ月、すなわち1972年8月にポルシェはミュンヘン市のドイツ特許庁にある特許を提出した。パテントナンバーは「2238704」。このパテントこそ、のちにカレラRSを決定的に有名にするあるデバイスの特許であった。それは乗用車のリアスポイラーに関するもので、言うまでもなくダックテールであった。
カレラRSは元来ホモロゲーション・スペシャルとして開発され、レース用モデルのロードバージョンを求める層の要求を満たすために、限定数が製造されるはずだった。当初は、グループ4のレギュレーションを満たすために、500台を製造する予定だったのである。
カレラRSは1972年5月から、およそ15人の小さなエンジニアのグループによって、開発がすすめられた。当時ポルシェの開発責任者であったヘルムート・ボットは、クルマが「揚力」を過剰に受け、高速走行時に予測できない挙動を示す原因を突き止め、その対策を講じるように、空力のスペシャリストであったヘルマン・バーストに指令を出す。
そこで、彼は4歳年下で同じく空力のスペシャリストだったティルマン・ブロードベックとともに、その対策を検討するのである。
ダックテール完成当初は同僚に笑われた!?
彼ら2人は、その1年前にフロントのエアダムを開発し、このデザインは1972年の2.4Lの「S」から採用されていた。しかしそれだけでは不十分で、ボットは、ポルシェのレーシングカスタマーが「コーナーではBMWやフォード カプリに勝てない」と不満を漏らしているのを解消するための対策を講じろという命令を出していたのである。
挙動が不安定になる原因は911のリアスタイルにあり、速度を上げると飛行機の翼のように動作して、高速コーナーでの安定性を低下させていたのだという。しかし、今さらスタイルの改変はできず、「ボルトオンで追加できて既存の911と互換性がなければならない」という条件のもとでの対策だったのだ。
こうして完成したのが、のちにダックテールと称されるようになるリアスポイラーであった。完成当初は「そんなもの付けて速くなるわけがない」と同僚に笑われたそうだが、テストドライバーのギュンター・シュテックケーニヒが、ヴァイザッハでノーマル911との比較テストで、より速く、より安定していると報告した時は、誰も笑わなかった。そしてこれを見たボットも、採用に踏み切った。もっとも完成当初はダックテールとは呼ばずに「ホエール・フィン」と言われたようだが、それがいつ「ダックテール」となったのかは不明である。














































































































































