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1600万円以上かけてレストアしても落札額は約664万円…BMW「2000 tiiツーリング」のオークション市場相場の現実とは

1600万円以上かけてレストアしても落札額は約664万円…BMW「2000 tiiツーリング」のオークション市場相場の現実とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

レストアには10万ユーロ以上を投入しながらも……

「BMWクラシック」から提供された出生証明書によると、このほどRMサザビーズ「PARIS」オークションに出品されたBMW 2000 tiiツーリングは、このモデルとしては最初期にあたる1971年式。シャシーNo.は「3420503」である。

この初期型は、一連の「02」および「ツーリング」では定番カラーのひとつともいうべき「ゴルフ・イエロー(Golf Yellow)」としてラインオフ。1971年8月2日に西ドイツ(当時)、ノルトライン=ヴェストファーレン州アルスドルフの正規ディーラー「ヘルゲンハンKG」に引き渡されたという。そして、同じくノルトライン=ヴェストファーレン州のヴュルゼレンで登録されたこの個体のその後のヒストリーは不明ながら、2015年12月にベルギーの「キュレーテッド・コレクション」によって入手されたとのことである。

現在でも、新車として工場から出荷したときの外装色が維持されているこの個体は、当時のオプションパッケージ「Sport Paket」設定車とほぼ同じ仕様に仕立てられ、今や希少品となったレカロ社製純正スポーツシートと、13インチ径の伊「FPS」社製のアロイホイールを装備している。また、このクルマには前述したBMWクラシックからの出生証明書とオーナーガイドも付属している。

ただし、ステアリングホイールは現代における使い勝手を優先したのか、このクルマの時代性とテイストには明らかに不釣り合いな、1990年代末風のスポーティなものが装着されているのが、唯一気になるポイントといえるようだ。

 

レストア費用が反映されていないエスティメートに……?

2020年には、ブリュッセルの南に拠点を置く「カロッセリー・ヤンセン(Carrosserie Janssens)」によって、ボディのリペイントを含むレストア作業が施され、その作業の内訳は、今回のオークション出品に際して添付されるファイルにも綴じられているインボイス(作業請求書)にて確認が可能。同年2月発行の請求書を見ると、総額10万5522ユーロ(邦貨換算約1688万円)もの作業となったことが記録されている。

この希少なBMW 2000 tiiツーリングについて、RMサザビーズ欧州本社は、出品者であるキュレーテッド・コレクションとの協議のうえ、その5年前レストアのために投じた費用とは見合わないようにも映る、3万ユーロ~4万ユーロ(邦貨換算約480万円〜640万円)というエスティメートを設定。

そして迎えた2月5日の競売では、エスティメート上限をわずかながら上回る4万250ユーロ、日本円に換算すると約664万円という、出品者側にとっては予想以上の高値で落札されることになった。

ちなみにこのハンマープライスは、これまで国際クラシックカー市場に売りに出された2000tiiツーリングないしは2002tiiツーリングとしては、かなり上位に属する。また、通常の2002tiiリムジーネの相場価格とも、ほぼ拮抗するものである。

つまりは、もともとエスティメートを設定した段階から、出品者サイドではレストア費用の回収はできないことを理解していた……、ということなのであろう。

>>>アルピナとM5を特集! BMW専門誌「BMW LIFE3」はこちら(外部サイト)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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