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ウッドパネルは衝突の際に安全なのか? メルセデス・ベンツの細部に至るまで徹底した「安全性」へのこだわりを解説【メルセデス安全性Q&A】

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

トランク部全体で衝撃を吸収する安全な後部構造とは?

後面の安全性は、4項目の後面オフセット衝突テストと2項目の後面100%衝突テストを設定しています。後方からの追突に対して、トランク部全体で衝撃を吸収し、しかも乗員の生存空間の変形を最小限に抑えるため、安全な後部構造になっています。

その衝撃吸収エリアは、【1】堅牢なボックス型のサイドメンバー、【2】トランクフロアのクロスメンバー、【3】アルミニウム製の横断プロファイル、【4】ボルト連結クラッシュボックスから構成されています。

とくに、燃料タンクは気密性/耐久性を高め、そして衝突の影響を受けにくい位置であるリアシートの下に設置しています。なぜかといえば、衝突事故による車両火災の多くが、燃料タンクが破損しての燃料漏れが原因とされているからです。この位置に設置することにより、リアアクスルで衝撃を受け止め保護すると同時に、追突された時の衝撃はトランク部全体で吸収され、燃料タンクに衝撃の影響が及びにくくなり安全です。

横転・転倒に対するルーフの剛性は?

カブリオレやロードスターが巻き込まれている事故の約4分の1は横転事故です。メルセデス・ベンツの安全開発者がこの問題に取り組むのも、そのためです。メルセデス・ベンツは1986年、SLに0.3秒で立ち上がるオートマチックロールバーを搭載することで新しい横転安全基準を設けました。車体の傾斜が一定速度以上(4G)になるとセンサーがその状況を検知し、ルーフの開閉状態に関係なくスプリングによってロールバーを押し上げ5tの力に耐える強度で、横転保護機能を果たします。

堅牢なAピラー構造によってもさらに横転保護を高めています。その筒状構造は高荷重に耐える様に設計されており、ルーフ・ドロップテストで証明されています。このテストでは、軽く傾けた車体を50cmの高さから落とすことで、Aピラーの一方だけに全重量を掛けます。しかし、規定で許されるAピラーの変形はごくわずかなもので、三点倒立の概念を採用した安全システムです。

メルセデス・ベンツのカブリオレやロードスターであるがゆえに、この厳しいテストを何度も合格しなければならないのです。Eクラスクーペ/C207はBピラーが無いので、Aピラー/ドアシル/リアシート下のサイドメンバーなどをとくに強化し、高い剛性を確保することで、Bピラーレスの美しいデザインを実現しています。

5重の安全ステアリングシステムとは?

1967年にはすでにメルセデス・ベンツはセーフティステアリングを標準装備しました。それまでの実験データで正面衝突の際、その衝撃でドライバーがステアリングに頭部や胸部を強く打ち付けることが予測されていました。ドライバーの一番近くにあるステアリングこそが危ないのです。実際の事故においてもこのケースが数多く報告されました。そこで、メルセデス・ベンツは衝撃吸収式セーフティステアリングシステムを取り入れました。

【1】ステアリングパッドの採用、【2】エアバッグを標準装備、【3】ステアリングボスの下にショックアブソーバーを採用、【4】コルゲートチューブを組み込んだステアリングコラムを採用(縦・橫の衝撃を吸収)、【5】ステアリングギアボックスはフロントアクスルの後ろに設置(その後、ラックアンドピニオンを採用しステアリングギアボックスはない)。

まずステアリングパッドで衝撃を受け止め、エアバッグで衝撃をさらに軽減します。さらにステアリングボスの下のショックアブソーバーで衝撃を吸収し、そしてコルゲートチューブ(波型)を組み込んだステアリングコラムで縦・橫方向の衝撃を吸収します。大事なステアリングギアボックスはフロントアクスルの後に設置してあり衝撃をガッチリと受け止めます。

とくに、以前のステアリングコラムはテレスコピックタイプ式で望遠鏡のように縦方向にしか伸縮しなかったので橫方向の衝撃も吸収するコルゲートチューブに改良され、そしてさらに、壊れやすくし、提灯を折りたたむように縦・横の衝撃を吸収するコラプシブルシャフトを採用しています。

ダッシュボードとウッドフェイシアの安全性は?

メルセデス・ベンツでは1960年代の初めから、室内の安全のためにダッシュボードにパッドが被いかぶせられていました。1980年代では、それはもう見てくれだけでなく、材質、構造、形状等トータルで安全設計が果たされています。

例えば、1950~1960年代にわたる全盛期にダッシュボードを華やかに飾ったウッドフェイシアは大木から削り出された生(ムク)でした。ところが、衝撃吸収能力という安全面からすると今日ではこれでは通用しません。なぜならば、衝撃を加えた時に割れ目が「ささくれて」客室の乗員に危害を与えかねないからです。

そのため一時期姿を消していたウッドフェイシアですが、メルセデス・ベンツで永年にわたって研究を重ねてきた結果、現在は新時代のウッドフェイシアが盛んに採用されています。

裏表の木目板の中にアルミを挟み、サンドウィッチの多層構造にし、衝撃を受けた時には「アルミが柔軟に変形」してくれるので安全です。これを「アルミ・サンド」と称し、木目模様がもつ本来の美しさを生かし、ウッドフェイシアの安全もスマートに適合させているのです。

メルセデス・ベンツはこの安全な「アルミ・サンド」にしたウッドフェイシアの特許を取得して、もう45年以上になっています。そして、今や世界中のメーカーがこの安全なウッドフェイシアの構造を採用しているのです。

筆者は実際、1983年の「380SEL/W126」のウッドフェイシアにメスを入れ解剖したので、画像ギャラリーでその写真を紹介します。

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