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2代目と4代目「Eクラス」のハンドルをぶった切って測定してみた! メルセデス・ベンツの安全性にまつわる細かい疑問にお答えします【メルセデス安全性Q&A】

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

  • シュツットガルト・ウンタ-トゥルクハイムの本社のテストコースで、有名な90度バンクを激走するW201とW126。背後に迫るのは大型バスO303シリーズだ
  • 1972年入社当時に筆者が見せられたメルセデス・ベンツ「セーフティ・ファースト」というフィルム
  • ニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足していけばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。写真は新型Eクラス/W214
  • ニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足していけばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。写真はSクラス/W140
  • ニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足していけばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。コーナリング時のハンドル特性の図解
  • 四輪独立懸架を備えた「世界で最初の量産車」は、1931年に登場したメルセデス・ベンツ初の小型車、170/W15
  • 1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。後輪は各々適切に配置された「5本のリンク」によって位置決めされ、快適な乗り心地に必要なしなやかさを持ち、操縦性への悪影響を抑え、路面からのショックを吸収し、優れたロードホールディングを実現。今や高級車の主流だ。写真はその構造パーツ
  • 1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。後輪は各々適切に配置された「5本のリンク」によって位置決めされ、快適な乗り心地に必要なしなやかさを持ち、操縦性への悪影響を抑え、路面からのショックを吸収し、優れたロードホールディングを実現。写真はその大型図解
  • 雨樋・レインランネル(溝)を設けて人間工学的に視界を確保するように設計。写真はフロントのレインランネル(溝)。妻谷コレクション。
  • 雨樋・レインランネル(溝)を設けて人間工学的に視界を確保するように設計。写真はリアのレインランネル(溝)
  • 雨樋・レインランネル(溝)を設けて人間工学的に視界を確保するように設計。写真はリアのレインランネル(溝)
  • 雨樋・レインランネル(溝)を設けて人間工学的に視界を確保するように設計。写真はドアミラーにもレインランネル(溝)を設けてある
  • メーター類がアナログメーターを基本としているのは、「表示が針」であり、指針が示す数字を見れば一目で、直感的にすばやく頭の中で理解できるから
  • 1本のコンビネーション・スイッチレバーで、上下に倒すとウインカー、手前に引くとパッシング、レバーをつまんで捻るとワイパー、押し込むとウォッシャー、そして奥へ倒せばヘッドライトのハイビーム/ロービーム切り換えの機能を発揮
  • 操作類を手が届きやすい位置に配置しているのは、運転上の操作安全性を重視しているため
  • 長時間運転するドライバーにとって、およそ背巾ぐらいの径のハンドルが最も好ましく、またグリップも太い方が疲れにくい。写真はC180クーペ
  • ハンドルは握りやすい太さ。グリップ性に優れ、湿度や高温に耐えるナッパレザーを採用。写真はC220d
  • ちょうど手のひらに小鳥をつかんでいるように握る程度が良い。つまり、太いハンドルを適度の力で小鳥をつかんでいるように握るのがコツ
  • ハンドルの直径の比較。左はEクラス前期/W210で直径40.0cm、右はEクラス/W212で直径38.5cm
  • ハンドルのグリップの比較。左はEクラス前期/W210で円形の握りやすい波形状、右はEクラス/W212で円錐状の形で奥行きがあり、握りやすくなっている
  • Eクラス前期/W210。芯は丸形状の鉄製で、中は空洞だがかなり重たい(磁石が付く)
  • Eクラス/W212。芯は円錐形状のアルミ合金を抱き合わせ、空洞で軽量化を図っている(磁石が付かない)
  • Eクラス/W212;芯は円錐形状のアルミ合金を抱き合わせ、空洞で軽量化を図っている
  • グリップの比較材質。左はEクラス/W212で硬いラバークッション部分に本革を貼り合わせている。右はEクラス前期/W210で柔らかいラバークッション、表面は滑らないようにシボ加工
  • Eクラス/W212とEクラス前期/W210のハンドルを解剖して比較した結果
  • ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)が世界に先駆けて1978年Sクラス/W116にオプション設定で4輪に搭載。写真は濡れた路面でのABSアンチロックブレーキシステム装着車(右)と非装着車の比較テスト
  • 1本のコンビネーション・スイッチレバーで、上下に倒すとウインカー、手前に引くとパッシング、レバーをつまんで捻るとワイパー、押し込むとウォッシャー、そして奥へ倒せばヘッドライトのハイビーム/ロービーム切り換えの機能を発揮
  • 筆者はハンドルの材質/グリップ/芯に非常に興味があり、Eクラス前期/W210とEクラス/W212のハンドルをサンダーでメスを入れ解剖した

メルセデス・ベンツ独自の安全性をQ&A形式で解説

メルセデス・ベンツといえば安全なクルマ、というのは、日本に輸入され始めた時代から現代に至るまで、もはや共通認識といえるでしょう。40年にわたり正規ディーラーで活動した筆者が現役時代にユーザーたちに説明してきた、メルセデス・ベンツの独自の安全性をQ&A方式で具体的に解説していきます。

「シャシーはエンジンよりも速く」の意味は?

メルセデス・ベンツの走行安全性は、ひと言でいえば「シャシーはエンジンよりも速く」の設計哲学です。メルセデス・ベンツのエンジニアたちがつねに心に打ち込んできた名文句で、「エンジン性能を上回るシャシー性能こそ、スピードと安全の追求に欠かせない」としています。

メルセデス・ベンツが言う高性能車とは、「走る性能・曲がる性能・止まる性能」がそれぞれ確実に効果を発揮し、しかもクルマ全体のバランスがとれたクルマです。いわゆるスーパーカーのようにエンジンパワーが強すぎてコントロールの難しいクルマ、これはメルセデス・ベンツでは不合格です。適度なパワーのエンジン性能をフルに駆使させても、なおも余裕あるサスペンション、そしてブレーキ、操縦性等、メルセデス・ベンツの言う安全なクルマとは、誰にでもコントロールできるクルマであるということが第1条件となっています。

例えば、1972年入社当時に筆者が見せられたメルセデス・ベンツの「セーフティ・ファースト」というフィルムに、次のような印象的なシーンがありました。

【1】1台のメルセデス・ベンツが2車線の道路を高速で素っ飛んでくる。
【2】いきなり大型ダンプカーが物陰から鼻を出す。
【3】メルセデス・ベンツはとっさにブレーキを踏み、急ハンドルを切って隣の車線に逃れる。
【4】しかし、もう目前には対向車が迫ってきている。
【5】正面衝突の危険を避けるために、またしてもハンドルを急激に切って元の車線に走り込む。

メルセデス・ベンツは、この複雑な「走る・曲がる・止まる」操作を、腕が良いテストドライバーではなく、誰にでも難なくコントロールできるようにすることを走行安全性の第1条件にしています。

ニュートラルに近い弱アンダーステア設定とは?

メルセデス・ベンツのエンジニアたちは「コーナリングはニュートラルに近い弱アンダーステアが最も好ましい」と、はっきりと言い切っています(曲がる性能)。もちろん、適度のロールも与えています。つまり、オーバーステアの性格をもっているクルマでは、ある時に突然、カーブに対して逆にハンドルを切らなければならない場合も生じます。ニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足して行けばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できるのです。

ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)とは?

メルセデス・ベンツは止まる性能としてすでに、1963年から油圧式デュアルサーキットシステムを全乗用車に装備していました。さらに、ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)が世界に先駆けて1978年「Sクラス/W116」にオプション設定で4輪に搭載されました。このABSはじつに延べ3500万kmの走行テストの末に生まれました。簡単にいえば、フルブレーキ時のタイヤロック(タイヤが転がらない状態)を防止し、ステアリング操作による危険回避を可能とするシステムです(1970年にアナログ式、1979年にデジタル式を発表)。

ABSはいずれかのタイヤがロックしそうになると、コントロールユニットによりロックしそうなタイヤのブレーキ圧が弱められタイヤがロックするのを防ぎ、また、ブレーキ圧を高める制御(ポンピング)を繰り返し行い、車両の安定性を確保します。ABSで最も重要な構成部品は、個々の車輪の速度センサーです。これらのセンサーからの信号によってコントロールユニットは各タイヤのブレーキ圧を決定します。濡れた路面や凍結などの滑りやすい路面に限らず、乾いた路面でもパニックブレーキ操作時にタイヤがロックするのを防ぎ、危険回避のステアリング操作が可能です。

なぜ、小型車に最高の足まわりを採用したのか? マルチリンク・リアサスペンションの特徴は?

もっぱらレーストラックのための技術だった四輪独立懸架を備えた「世界で最初の量産車」は、1931年に登場したメルセデス・ベンツ初の小型車「170/W15」でした。スポーツカーでも高級車でもなく、なぜ小型車なのかって? そこには、「乗り心地や安全性が二の次にされがちな小型車にこそ、それを克服するための新技術を優先して採用すべきである」という、メルセデス・ベンツ設計者の強い意志があったのです。

そして1982年、「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した「190/W201」シリーズへと受け継がれました。この独立懸架のマルチリンク・リアサスペンションは、13年の歳月をかけ、実際のテストとコンピュータ・シミュレーションを駆使して開発され、大型サルーンに匹敵する乗り心地、操縦性、安全性をコンパクトな190/W201シリーズにもたらしました。

後輪は各々適切に配置された「5本のリンク」によって位置決めされ、快適な乗り心地に必要なしなやかさを持ち、操縦性への悪影響を抑え、路面からのショックを吸収し、優れたロードホールディングを実現しました。そして、今や高級車の主流になっています。

いずれにしてもどんな路面状況においても、タイヤの接地具合、クルマの方向安定性を正確にドライバーに伝えるのが、メルセデス・ベンツの足まわりの特徴と昔から言われています。

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